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   奇跡 前編   


少し早いですが、皆様メリークリスマス。
1話でお届のハズが長くなったので前後編です。
そして後編が25日に間に合うかはアヤシイです!


「キョーコ、起きて?」
「んーー…」

蓮の胸にもたれてスースーと規則正しい呼吸を繰り返すキョーコは、一体どんな夢を見ているのだろう。
そっとキョーコの顔を覗き込むと、初めてのシャンパンに少し酔ったらしく、まだほんのりと赤い顔をしている。

「ほら、そろそろ起きよう?」
「んー。あと少しだけ…」

眉間に皺を寄せて、嫌だと駄々をこねる子供のように蓮の胸に額を擦り付けるように首を振るキョーコが可哀想に思えて、起こすのを躊躇いそうになる。
でも、もうすぐ0時。君の20回目の誕生日の始まりの瞬間がやって来る。

誰よりも早く、誰よりも君の傍で、君の誕生を祝いたいんだ。




今日のクリスマス・イブを、レンとキョーコは2人だけで蓮の部屋で過ごしていた。
キョーコが朝から準備をしたと言う、とっておきの手料理に舌鼓を打って、生クリームと苺でデコレーションされたケーキを食べながら、2人でシャンパンを飲んだ。

ハタチにはほんの少しだけどフライングだから、これは2人だけの内緒だと言いながら蓮はキョーコの目の前のグラスへとシャンパンを注ぐ。
金色の液体が注がれたグラスの底から立ち上る一筋の細かい気泡を、飽きずにうっとりと眺めるキョーコを、蓮は飽きずに目を細めて眺めていた。
その視線に気づいたキョーコは恥ずかしそうに慌ててグラスを手に持ち、恐る恐るグラスに口を付けて、コクリと飲んだ。

「初めてのシャンパンのお味はどう?」
「うーん、何だか大人の味がします」
「分かるような分からないような感想だね」

どうせボキャブラリーがありませんと拗ねた様子で蓮を見上げれば、相変わらずじっとキョーコを見つめるレンの双眸に、キョーコの心臓はドキリと大きく弾んだ。
初めて飲んだ大人の味に戸惑いながらも、蓮の熱い視線から身を躱そうと、キョーコはシャンパングラスを傾ける。

「そうだ、プレゼント交換しましょう!!」

いかにも今思い出したと言うように、わざとらしくぱちんと手を叩いてテーブルから立ち上がり、居間のソファへと小走りで駆け寄って行くキョーコを、蓮はクスクスと笑いながら追いかけた。

「敦賀さん、メリークリスマス!!」

ソファの陰に隠しておいたプレゼントを、キョーコは笑顔で蓮へと差し出した。


深夜、蓮の部屋で束の間の逢瀬を過ごしたキョーコをだるまやへ送って行く車内で、ハロウィンも終わりクリスマスの雰囲気に浮足立ってきた街を眺めていたキョーコが思いついたようにクリスマスにプレゼント交換をしようと言い出した。

「敦賀さん。クリスマスですけど、プレゼント交換しませんか?」
「うん。いいよ」
「それじゃあ、プレゼントの上限は1000円にしましょう」
「え?」

1000円という金額設定に、蓮は面を食らった。
勿論、キョーコからもらうプレゼントの金額が安かろうがタダだろうが気にもならない。その辺の道端に咲いている花だって十分だ。
でも蓮がキョーコの為に用意したいプレゼントまでその金額設定が適応されるのは困る。
そろそろ車の免許が欲しいと言っていたキョーコに似合う、MINIの赤いクーパーをプレゼントの候補にしていた蓮にとって、その金額設定は承知し難い。
プレゼントに金額設定は必要ないと言っても、キョーコは絶対に1000円だと譲らない。
どうにか金額設定を失くそうとする蓮に業を煮やしたキョーコは、もしも1000円以上の金額のプレゼントを用意するつもりならば、2人だけのクリスマスは開催中止だとキョーコは宣言した。

2人だけで過ごすクリスマスどうにか捻出しようと、社に無理を言って何カ月も前から仕事を調整して手に入れた休日を、そんな些末な事で台無しにしたくない。
仕方なくMINIを諦めた蓮は、1000円という中高生ですらビックリするような値段設定に、本気で頭を悩ませた。


そんな蓮の苦悩を知ってか知らずか、無邪気な笑顔を浮かべるキョーコが両手で差し出したプレゼントを蓮は受け取った。
赤とゴールドのリボンをしゅるりと解いて、緑色の袋から取り出されたのは、ライトグレーの手袋だった。

「もしかして、キョーコが編んだの?」
「はい。何とか24日に間に合いました」
「…ありがとう。はめてみてもいい?」
「勿論です」

柔らか肌触りの手袋を蓮は慎重に手にはめる。その様子をキョーコも少し心配そうに見守る。

手袋の温かさ以上に、キョーコの手作りだと思うだけで、指先よりも心の方が温かくなる。

「ありがとう。ぴったりだよ。もしかして掌の大きさや指の長さも絶対視感のなせる業?」
「絶対視感だけじゃないですよ?その…手を繋いでくれた時の、手の大きさとか記憶を思い返してサイズの微調整を行いました」

ついでにその手から伝わった温もりも思い返して、手袋を編む手が気づかないうちに止まってしまっていたことは内緒だ。
1人思い返して恥ずかしそうに俯きがちに笑うキョーコの姿に、温められた蓮の心からは愛情が溢れてくる。

セールの毛糸玉が3つで980円だったと君は笑うけれど、編んでくれた時間を思うと申し訳なくなる。
君は決して魔法使いじゃない。だから呪文1つでカボチャが馬車になるように、毛糸が手袋になるなんてことは絶対に無い。
仕事や学業で忙しい合間。それにきっと睡眠時間さえ削ってこの手袋を編んでくれたんだろう。

器用な君のことだから、きっと鼻歌を歌いながらこのアーガイル柄の模様も編み混んでくれたのだろうけど、その間ずっと俺の事を考えていてくれたんだろか。この手袋をはめた俺を想像しながら編んでくれていたのだろうか。

そんなキョーコの心のこもったプレゼントに相応しい贈り物を選べたのだろうか。
ふと蓮の心に不安が忍び寄る。

「…これは俺からのプレゼント」
「ありがとうございます!!」

蓮が差し出したプレゼントのラッピングを慎重な手つきで開けていくキョーコをじっと見守る。
カサカサと包装紙を丁寧に開けて、そのプレゼントを見た瞬間、キョーコは大きな目を更に見開いて。そして満面の笑みを蓮に見せた。

「これ、日記帳ですか?」
「そうだよ」

それは金色で縁取られた白い表紙に、金色の大きな羽根を広げた天使が描かれた日記帳だった。

1000円と言う金額設定に、何をプレゼントしたらいいか悶々と1人考えていた時、最近はバラエティよりも女優のお仕事の割合がぐんと増えたと喜んでいたキョーコが、春からの連続ドラマへの出演が決まったと目を輝かせながら報告してくれた時、日記帳をプレゼントにしようと蓮は決めた。
演技に悩みながらも着実に一歩一歩前に進んでいるキョーコの、その充実した毎日が綴られるといい。
そう思って選んだものが日記帳だった。

「可愛い!中にも羽根とか雲の上でお昼寝をしてるチビ天使が描かれてる!!」

まだ真っ白な未来のページをめくりながら、キョーコは満面の笑みを浮かべている。
どうやらメルヘン思考のキョーコの御眼鏡にもかなったようだ。

蓮は『よし。』とガッツポーズを決めたい気持ちだった。

「今日の日記から付け始めますね。敦賀さんと二人で過ごすクリスマス・イブから書けるなんてとっても贅沢です…あれ、なんか手袋、手首のあたりモコモコしてます?」
「え?」
「サイズ間違えちゃったかなぁ」

今までの笑顔を曇らせて、変わりに難しい表情で不安そうにしているキョーコの視線の先をにある蓮の左手首を見て、蓮は慌てて首を振った。

「あぁ、違うよ。ほら時計が…」

そう言うと、どんな時も自分への戒めとして身に付けてきた腕時計を蓮は躊躇いつつも外した。

「ほら。ピッタリだよ」

そう言ってキョーコを見ると、キョーコはじっと時計を見つめている。

「キョーコ?」
「前も思ったんですけど、この時計ずっと止まったままなんですか?」
「うん…。壊れてるんだ」


俺が壊した。

リックを。

リックの時間を止めてしまったんだ。

蓮の胸にどうしようもない痛みが走る。
あの日、暴走した蓮を止めようと追いかけたリックに襲い掛かった悲劇を思い出し、蓮は痛みに耐えるように歯を食いしばり、ぎゅっと目を閉じた。

その時

「ちょっとだけいいですか?」

そう言うと蓮の手から腕時計を取り上げ蓮があっと思う間もなく、キョーコは腕時計を握ったまま勢いよくブンブンと腕を上下させた後、腕時計をそっと耳元にあてた。

リックの腕時計を譲り受けてから、それは両親にも誰にも触らせることは無かった。
自分のどす黒い過去への戒め、枷としてずっと身に付けてきた腕時計を、無垢なキョーコが今手にしている。
蓮は突然の事に、茫然とキョーコの行動を見守る事しかできなかった。

暫くすると、キョーコがにこりと笑った。

「音がします。ちくちく言ってます。この時計、電池じゃなくて手巻き時計だったんじゃないですか?手巻き時計はリューズを巻かないと止まっちゃうんですよ?」

そんな筈はない。リューズも動かない程ダメージを受けて壊れた筈だった時計が動き出すなんて有り得ない。
そう思っても、強張った口からは何の音も紡がれない。

今の時間は、と言って部屋の置時計を見ながら腕時計の針を正しい時間へとキョーコが合わせるのを、蓮は何も言えずただ見つめていた。

はい、とキョーコは笑いながら時計を蓮の手のひらへと返す。
蓮の受け取る手が自然と震える。

受け取ったそれを見た自分の目を疑い、何度も目を瞬かせる。
そしてもう一度目を見開いて食い入るように文字盤を見ても、確かに秒針が時を刻んでいた。

その文字盤が歪んで見える事に気づくと、蓮は流れ落ちる涙を見られたくなくて、慌ててキョーコを抱きしめた。


「壊れたんじゃなくて、少しお休みしていただけなんですよ」
「…うん」
「また動き出して良かったですね」
「…うん」
「敦賀さん、メリークリスマス!!…ちょっと眠くなったので少しだけ眠っていいですか?」
「…うん」
「じゃあ、少しだけ…」

そう言って目を瞑るキョーコの髪に、蓮は頬を寄せた。

きっと蓮に気を遣って、キョーコは眠ると言ったのだろう。
それでも蓮を1人にするのは心配だから、何も見ていない、何も聞いていないからと、蓮に身を預けて傍で眠るという事を選んだキョーコの優しさに蓮は甘えた。


歩みを止めていた時計の針が、もう一度動き出したように。
一歩を踏み出してもいいのだろうか。

休んでいただけなのだと、そろそろ前へ進もうと。
あの日から動けなくなっていた俺の手をキョーコが力一杯握り締めて、前へ進もうと言ってくれている。

キョーコの手を握り返して、一緒にその隣に並んで歩んでもいいのだろうか。

リックはそれを赦してくれたのだろうか。

あの日、壊れてしまったリックの腕時計。その時計が時を刻み出したのは偶然なのだろうか。
それとももう一度動き出したのも、ラグの上の日記帳に描かれた天使の顔が微笑んだように見えたのも、聖夜の奇跡なのだろうか。

そんな奇跡を蓮にもたらしてくれた、かけがえのない存在が今確かに自分の胸の中で小さな寝息を立てている。

「メリークリスマス。キョーコ、素敵なプレゼントをありがとう」



続く



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