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   黒猫の希い 31   


寒いーっ。皆様、雪害大丈夫でしょうか。
ナーの住む街、晴天ですが風が凄く冷たいです。

なかなか進まない黒猫話ですが、こちらも今年中にどうにか形にしたいと思ってます。




ミロクを含めたほとんどの死神たちが誰が決めたモノか疑問も持たず、淡々とスケジュール通りに役目を終えた人間の魂を回収を行う永遠に続く日々を当たり前だと思っていた。

人間たちの、愛し合う恋人や家族との永遠の別れ。いがみ合い憎しみ殺し合う姿を見ても何の感情も覚えなかった。
その生を終えた者たちが至福を感じていようが後悔をしていようが死神には関係が無かったし、どんな業を背負っていようが、それは人間それぞれに等しく与えられた役目を終えたモノだと思っていた。

何の感情に囚われる事もなく、決められた時間に魂を回収し決められた場所へと送り届ける事が、人間たちと同じようにミロクに与えられた役目だと思っていたのに。

そんな誰にとっても単調な日々に、変化は突然訪れた。

末っ子の兄代わりは何を思ったのか、役目を終えた魂の行き場のない怒りの相手役を買って出た。
時に頷いて話を聞いてやったり、時には手を出してコテンパンに伸したり伸されたり。
捨て台詞を吐きながら傷だらけで帰ってくる姿に、最初は馬鹿な事は止せと渋い顔をしていた仲間たちも次第に諦め、そのうち面白がるようになった。

腐った根性に俺の拳をお見舞いしてやったぜ!と頬を腫らして得意げに話す少年の頭をガシガシと乱暴に撫でてやったものだ。
そんな少年の頬にすり潰した薬草を塗った布をあてようと、今にも泣き出しそうに顔を歪める少女がいた。

心配そうに大きな目を潤ませて少年を見つめる少女もまた、毎日傷だらけだった。

目に見える傷の時もあれば、回収先で出会った興奮状態の魂の叫びに、心を切り刻まれてトボトボと帰ってくる事もあった。

ごめんね、ごめんね。助けてあげられなくて。
後悔してるよね。やり直したいよね。でも、出来ないの。
私には何もしてあげられないの。
ごめんね。

ぐずぐずと泣きながら帰ってくる末っ子の頭を撫でてやることしかできない事に死神たちは心を痛めた。

そんな泣き虫だった末っ子が、1人の人間と出会って変わった。

人間に同情しただ涙を流すだけでなく、その心情に寄り添うようになった。
俯き自信なさそうに彷徨わせていた視線は前を向き、力強くその先を真っ直ぐ見つめるようになった。

『いつかコーンに再会した時、自分は精一杯頑張ったよって胸を張って言えるようにね』

何のてらいも無く、キラキラと瞳を輝かせて笑いながらそう言ったキョーコに、誰もが目を細めた。

眩しくて。

いつの間にか、周りの死神たちにとってキョーコはかけがえのない存在になっていた。


そんなキョーコが、その唯一の人間の為に人間に堕ちたと言うのに。
唯一だった筈のコーン以外の人間を想い、愛しい存在なのだと、これほどまでに柔らかく笑う様子にミロクは驚いていた。


「…まあいい。俺たちはそろそろ行くよ。色々と聞きたいし、また今度ゆっくり話そう」
「また?また今度って言うけど、約束もしないでどうやって会えるって言うの?そんな簡単に会えるなら、とっくにコーンと再会してるよ」

頬を膨らませて力なく俯くキョーコの様子にミロクは驚いた。

「なんだ、お前まだコーンに会ってないのか。…だったらレイノが手伝ってやればいい」

急に話を振られたレイノがピクリと器用に片眉を上げて、隣に立つミロクをジロリと睨みつけた。
その眼は明らかに迷惑だと言っている。
そんなレイノの様子に構わず、ミロクはキョーコに笑いかけた。

「キョーコ、お前まだコーンに貰ったって言ってたあの石持ってるのか?」
「当たり前じゃない。勿論持ってるよ」
「ちょっと貸してみろ」
「えー。嫌だよ」

いくら昔馴染みのミロクとは言え、大切なコーンを不用意に渡したくない。
顔を顰めて抵抗するキョーコに、ミロクは誘いの言葉を重ねる。

「レイノは触った物から残留思念を感じ取れるんだ。コーンを探すヒントがその石に眠ってるんだぞ?コーンに会いたいんだろう?」
「うー…」
「少し触るたわけだよ。な?」

迷うようにレイノとミロクを交互に見つめながも、キョーコはコーンの存在を確かめるようにゴソゴソとポケットをまさぐる。
そこにあるのかとミロクは苦笑し、レイノは目を閉じて大きくため息をついた。

「…ミロク、1つ貸しだからな?」
「あぁ。頼むよ」

レイノはヤレヤレとでも言うように目を開けてキョーコを見据えると、すっとキョーコの眼前に手を出した。
その手を前に観念したのか、キョーコはポケットから取り出した小さながま口を開く。そのままがま口を傾け、手のひらにコロリと碧の石を転がした。
その石を軽く握ると、恐る恐るレイノの手のひらにそっと宝物を乗せた。


その瞬間、ビクリとレイノの体が揺れた。眉を顰めて、じっとその石を見つめている。

石に残されている、幼い久遠のハリウッドスターである父親への強い憧れと尊敬の念、自分も同じ舞台に立ちたいと夢を実現させようと、芸能の世界に一歩足を踏み入れた瞬間に暗転する世界。
そして現実と理想の狭間でもがき苦しむ少年にそっと寄り添う黒猫。


「…金髪イケメン…黒猫…」
「うーっ。やっぱり恥ずかしいからいいよ!もう返して!」
「ちょっと待て」

キョーコがコーンを取り戻そうと伸ばした手を遮るように、もう一方の腕を伸ばしキョーコの頭に手を置いた。

「なっ何!?」
「いいから少し黙っていろ」

驚いてビクリと身を竦めた後、手を振り払おうとするキョーコに、レイノは冷たく言い放った。
キョーコが助けを求めるようにミロクを見れば、ミロクも驚いたようにレイノを見つめていた。

ほんの少しでもキョーコの手助けになればとミロクに残留思念を視て欲しいとは言ったが、これほど真剣に深く思念を読もうとするレイノが珍しかった。
キョーコの縋るような視線に気づいて、ミロクが大丈夫だと言うように笑いかけた。

「大丈夫。もう少しそのままじっとしてるんだ」

キョーコが喜ぶ情報を引き出せることを信じて疑わないミロクの声は弾んでいる。
ミロクの知り合いとは言え、よく知らない人物にコーンを預けた状態で、更に頭を触られている状況にキョーコの体は硬直した。

もう限界だと心が悲鳴を上げている。

離して、もうコーンを返してと叫ぼうとした瞬間、触れていた掌がキョーコから離れたのと同時に、キョーコの体が突然後ろへと引かれた。

その勢いにバランスを崩して足をもつれさせる。
転ぶ。そう思って目をギュッと閉じた瞬間、とん、と固い壁に行き当たった。

そしてその壁は優しく、けれど力強くキョーコを包み込んだ。

驚いて振り返ったキョーコの目に、今まで見た事のない険しい表情でレイノを睨みつける蓮の顔があった。
キョーコは蓮の胸に引き寄せられてきた。

「れっ蓮!?」



続く



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