HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト   »  短編  »  正直者は救われる? 中編

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   正直者は救われる? 中編   


前後編の筈が3話になりました。
何事も計画通りにはならないようです。



「お前…セツに渡したコーヒーに自白剤を入れたと言うのは本当か」
「ああ、入れたぜ。って言うか、どうしてお前が飲んでないんだよ!アンタの今までの出演作を歌わせてやろうと思ったのに、どうしてセツカちゃんが飲んじゃうんだよっ。そもそもブラックコーヒーとミルクティを渡したら、普通女の子がミルクティ飲むだろう。そんな見た目でミルクティって!!」

自白剤が程よく効いているらしく、カインの問いかけに淀みなく答えながら頭を抱えて悶絶する村雨を、カインは殺気の籠った視線で見下ろしている。

ムラサメ…やっぱり小突き回す程度で済まさずにしっかりと躾をしておくべきだったか。

例えティーバックに湯を注いでそこに牛乳を入れただだけだろうが、コイツがセツの為に用意したものを口になどさせたくない。
そう思って俺が紅茶を飲んだって言うのに。


ユラリと黒いオーラを纏わせたカインに、ムラサメが反応する。


「ギャーッ今、毛穴ッ毛穴がぶわっって開いたーーっ」


ふえぇ?いま村雨さん、自白剤をコーヒーに入れたって言わなかった??
自白剤ってアレでしょ?ありとあらゆる秘密を包み隠さずペラペラと喋っちゃうアレでしょ!?私、それ飲んじゃったの?


うええええっ困りますーーっ!!


私には墓場まで持っていかなくちゃいけない、誰にも知られちゃいけない秘密があるっていうのにーっ!!


「何てものを飲ませてくれたのよ!後先考えずにそんなことをしちゃうなんて、やっぱりその頭のなかはエメンタールチーズみたいにスカスカだったのね!」
「なにをーっ。俺好みのカワイコチャンだからって……っ~~くーっ許しちゃう!セツカちゃんになら何されていい!ヒールで踏まれてもいい!いや寧ろ踏んで欲しい!!だから電話番号教えて」
「冗談言ってる暇があったら早く正気に戻んなさいよ」
「冗談なんかじゃねぇよ。それに俺は正気…じゃないかもしれないけど、セツカちゃんのことは本当に可愛いと思ってる!だからそんな爛れた兄妹関係なんて解消してコッチにおいで」

セツカを村雨が手招く。

「嫌!アタシは兄さんだけのモノなんだから!これからもこれから先も一生ずーっと!!」
「セツ?」
「っ…駄目…ですか?」

振り返ってたセツカの表情を見た瞬間、カインの動きがピタリと固まった。
不安そうにカインを見上げるその表情は、完全にセツカが抜けている。いつの間にか素のキョーコに戻っていた。

ずっとそばに居たいんです。

小動物のように震えながら潤んだ瞳で不安そうに俺を見つめるなんて。
この子は今何を口走ったか分かってるのか?
…もしかしてコレは自白剤の影響って事は本心では最上さん、そう思ってくれてるってこと?

妹の爆弾発言に現場が阿鼻叫喚の渦となる中、カインがすっかりと抜けた蓮は瞬き1つも出来ずに、ただキョーコに釘づけになる。

「つ……兄さん…」

そう呟くとキョーコは蓮の首に腕を回して、ピタリと体を預けた。
そのキョーコの首筋から漂う花のような香りに誘われて、無意識のうちに蓮はキョーコの細い腰に腕を回した。

「セツ…」

最上さん…
まるで夢みたいだ。
最上さんが自分から俺に抱き付いてくるなんて。最上さんの香りに酔ってしまいそうだ。

夢の中へと誘われるように、蓮がうっとりと目を閉じようとしたその瞬間、眼の端に見慣れたドピンク、ショッキングピンクが映り込んだ。
その色合いに、蓮の意識が急速に現実へと引き戻されたと同時に、見てしまった事を大いに後悔した。

ショッキングピンクのつなぎ…でもあれは琴南さんやもう1人のラブミー部員なんかじゃない。
あのサイズはどう見ても男だろう!

状況を把握しようと、瞬時に停止していた脳をフル回転させる。

ド派手なつなぎを着た、額にタオルを巻きサングラスをかけた男が、大道具を抱えたまま蓮をじっと威嚇するように見据えていた。

蓮がこちらを見ている事に気付いたのだろう。ショッキングピンクのガテン服を着た男はニヤリと笑いかけた。

…社長…一体何を思い付いたと言うんです?絶対に今の笑いは悪魔の微笑みでしたよね。
もしかしてカインを…演技を続けられなかった俺を嘲笑った?

キョーコを抱きしめている光景をローリィに見られたと言う動揺に瞳を揺らしているうちに、ローリィは踵を返してどこかへと走って立ち去ってしまった。

「どうしたの?」
「いや…何でもない。セツ、行くぞ?」
「でもまだ撮影が終わってないわ」
「いいから!」

そんな事よりも今は、得体の知れない薬を飲まされたキョーコの体の方が心配だ。

「だめっ。つ…兄さんはお仕事を放り投げるような人じゃないです!」
「大丈夫だから。取りあえず控室に行こう」

こんな状況でも自分の事よりも蓮の事を心配するキョーコを宥めて蓮は横抱きにした。

キーキーと叫ぶ村雨を無視して、蓮は呆然と立ち竦む監督に刺すような鋭い視線を送った。

「ひぃっ!」

跳ねるように肩を揺らした途端、青かった監督の顔色がデッドブルーへと染め抜かれたが、その心内を無視してカインはアイコンタクトを送る。

『中止、だよな?』
『もっもちろん中止です!中止以外の何物でもありません!!』

ブンブンと首を勢いよく上下に振る様はまるで壊れた人形のようだった。
有無を言わさない殺人鬼の視線に、一体誰が太刀打ちできると言うのか。

近衛監督はすぐにスタッフたちに指示を出す。

「とにかく今日の撮影は中止です。村雨君と雪花さんを今すぐ病院へ!」
「大丈夫っす!いつでもスタンバイできます。寧ろいつもよりやる気が漲ってます!」
「そんな…村雨君、今君は普段の状態じゃないんだ。続行は無理だよ」

それに、と監督は大きく息をついた後、居住まいを正して周りを見渡した。
その落ち着き払った佇まいと真剣な顔つきは、今の今までカインに怯えていた同一人物とは思えない程だ。

「この事は皆さん分かっているでしょうが、どうかくれぐれも内密にお願いします。もしもこんな事が外部に漏れでもしたら、これまで皆さんと作り上げてきた映画の話だって立ち消えになってしまうでしょう」

違法な薬物を安易に口にしてしまったのだ。
それも主役が。

「…クスリをやるなんてプロ失格だな」

ふぬぅぅー

カインがポツリと零した言葉は尤もで、自白剤に浮かされている村雨もぐうの音も出ない。興味本意の浅はかな行為で、自分だけでなく関係者全員に迷惑をかける事になったのだ。

「スンマセンデシタ!!」

村雨はスタジオ中を見渡して大声でスタッフや関係者たち謝ると、ブン、と音が鳴る程の勢いで頭を下げた。

とても勢いよく。

勢いよく腰を曲げる村雨のおでこが膝に打ち付けられ、その勢いのままクルリ一回転する。
周りがあっと思う間もなく、村雨は目を回して床に転がった。

「村雨くん!!」

スタッフや共演者たちが慌てふためきながら村雨を取り囲む中、蓮は踵を返してスタジオの出口へと向かう。
それに気づいた愛華が、慌ててカインに声をかけた。

「ちょっとカインさん!?」
「…セツは俺がどうにかする」


そう言い残してカインは撮影現場を去った。



つづく。



Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。