HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト   »  短編  »  正直者は救われる? 後編

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   正直者は救われる? 後編   


いやはや。長くなってしまいました。
色々と端折って何とか3話に納めた感じですが、どうにかおバカ話完。



控え室へと急ぐ蓮の腕のなかで、身を竦めているキョーコの体は心なしか小さく震えているようだ。キョーコから伝わる体温は蓮のそれよりも高いし、ウィッグから覗く首筋は薄桃色に染まってた。

「最上さん、息苦しい?大丈夫?」

蓮の問いかけにキョーコは小刻みに首を横に振る。

声も出せないほど辛いの?もう少しだけ我慢して。
あの時俺が変な嫉妬心などを起こさず素直にコーヒーを手に取っていれば、君をこんな目に遭わせずに済んだのに。

キョーコを横抱きにする腕に知らぬ間に力が籠る。
キョーコの様子を心配に思いながらも、先程スタジオで村雨に向かってセツカが言い放った一言に蓮の心は落ち着かないままだった。

『アタシは兄さんだけのモノなんだから!これからもこれから先も一生ずーっと』

その言葉は、自白剤に浮かされながらも、セツカを全うしようと愛する兄に向けられた言葉だったのかもしれない。
でも、もしかしたら。
抱きついて不安そうに見上げたその表情は、勝気なセツカではなくキョーコそのものだった。

ただの先輩と思われているとばかり思っていたのに、キョーコが自ら蓮の胸の中に飛び込んできたのだ。
キョーコから与えられた温もりに蓮の心はグラグラだった。

だから早く確かめたい。セツカではなくキョーコが、カインではなく蓮をどう想っているのか。
キョーコの口からききたい。

「オーイ!こっちだ」

知らぬうちに早足になる蓮を呼び止める間延びした聞き覚えのある声に蓮が振り返ると、そこにはカインとセツカが控室に持ち込んでいた私物や着替えを両手に持った、どピンクのガテン服を着たローリィが立っていた。
テンの移動車で来ていたらしく、そこで特殊メイクを落としたり着替えを済ませればいいと蓮たちを待ち構えていたらしい。

「社長、ありがとうございます。でもそんな事よりも最上さんを早く病院に連れて行ってやりたいんです」
「あぁ、それなら大丈夫だ。必要なものは用意する。さ、早くホテルに戻るぞ」

病院ではなく、蓮たちが滞在しているホテルへ急ぐと言うローリィに蓮は眉を顰めたが、大丈夫だと頷くローリィの様子に、特効薬か何かを準備してくれるのだろうと蓮は解釈した。
そもそも大きな声では言えないような薬を飲まされたのだ。たとえ知らないうちに飲まされたとは言え、マスコミにでも知られたら面白おかしく報道されかねない。
だからローリィはキョーコを病院に連れて行かなくても済むように、キョーコを正気に戻す特効薬をこの短時間に手配してくれたのだと、ここ一番の時に頼りになるローリィの広い背中を蓮は追った。


「じゃあ、蓮ちゃん、すぐに必要なものを持ってくるからね」
「はい。すみませんがお願いします」
「任せといて!」

2人をホテルへと送り届けたテンは車寄せで2人を降ろすと、とにかくキョーコを部屋で休ませるようにと言い残してそのまま走り去った。
普段の優雅な足取りなどかなぐり捨てて、キョーコを抱えて部屋へと急ぐ蓮にとってエレベーターを待つ時間も、部屋のキーを取り出す時間さえもどかしく感じた。
ようやく部屋へと辿り着いた蓮は、浅い呼吸を繰り返すキョーコをベッドへゆっくりと降ろした。
ぐったりとした様子のキョーコからウィッグを取り払い額に手をあてると、蓮の手のひらの冷たさが心地よいのかキョーコは目を細めて大きく息を吐いた。

「社長たちが今、最上さんを楽にしてくれる薬を用意しているから。辛いだろうけどもう少しだけ我慢できる?」
「…はい」
「喉渇いた?水持ってくるから待ってて」
「やだっ」
「最上さん?」

ミニキッチンへと向かおうと、キョーコの額から離れた蓮の手のひらを、キョーコが両手で握りしめていた。
その顔は追い縋るように必死で、蓮の手にキョーコの丸く揃えた小さな爪が食い込む痛みさえ甘い痛みとなって蓮の心臓を鷲掴みにした。

「行っちゃ嫌です」
「…分かった。ここに居るから。最上さんのすぐ傍に居るから安心していいよ」

そう言ってキョーコに寄り添うように蓮はベッドに深く腰を下ろして優しく髪を撫でた。

蓮が傍に居る事に安心したのか、キョーコは強く握っていた蓮の手を放そうと力を抜いた。
その瞬間、蓮がキョーコの指に自分の指を絡めて、キョーコの手のひらを包み込む様に握り返した。

「敦賀さんごめんなさい。変な薬なんて飲んじゃって…私、変なんです。普通じゃないんです。だからその…何を言っても本気にしないで下さい」
「どうして?俺がすぐそこのミニキッチンに行こうと、最上さんの傍を少しだけ離れるのも嫌だって言ったのも、本気にしたらダメなの?」
「っ…駄目です」

撮影スタジオの駐車場に停めてあったテンの移動車に乗り込んだ後、特殊メイクを落とそうと仕切りのドアへと手をかけた時も、キョーコは蓮を目で追い、手を伸ばそうとしていた。
不安そうに揺れる瞳に、駆け寄って抱きしめたい衝動を抑えこんだ自分を褒めてやりたいと思った。
それもこれも全部、理性を総動員して我慢を重ねる蓮に生暖かい視線を送るテンとローリィの存在があったからこその自制だった。

その2人がいなくなった今、ホテルの狭い一室で蓮は、溢れる程の気持ちを込めた真剣な眼差しをキョーコに向けていた。

「ねえ最上さん、俺の事好きなの?ねぇ、教えてよ。自白剤、効いてるんでしょ?最上さんの本心を俺に曝け出してよ」

その瞳に映る俺をどう思っているのか。君の言葉で。

蓮に絡め取られていない、自由な片手で口元を抑えてキョーコはブンブンと首を振った。

自分の意志とは関係なく、自白剤のせいで本心が口からポロポロと零れてしまわないように、どうにか飲みこもうとキョーコは必死だった。
そんなキョーコに、蓮は根気強く語りかける。

「ねぇ、お願いだから教えて?俺の事、何とも思ってない?それともただの先輩?」

ブンブン

「じゃあ、どう思ってるの?…少しは自惚れてもいい?」

ブンブン

眉を寄せてギュッと目を瞑ったまま首を振るキョーコが唇を抑えていた手の手首をガシリと蓮は掴んだ。
キョーコがあ、と思う間もなく、キョーコの視界は反転してベッドに押し倒された。
両手をベッドに縫いとめ、キョーコの動きを封じるようにを跨いだ蓮が、困惑の表情を浮かべるキョーコを無表情に見下ろしていた。

「痛いですっ!敦賀さん放してください」
「じゃあ、白状してみようか。離して欲しかったら俺の事を嫌いだと言えばいい。そうだよね。君は恋だの愛だのバカバカしい感情を俺になんか向けてくれるはずないもんね?」
「なっ」

そんな訳ないじゃない!!
必死にシラを切り通そうとしてるって言うのに、人の努力を何だと思ってるのよぉーーーっ!!

「敦賀さんのバカ!!好きですよ。敦賀さんが好きです。あー好きですとも!どうせ身の程知らずのバカ女ですよ!片思いだって分かってますよ。報われる筈もないのに、バカな感情に囚われてますよ。愛だの恋だの愚かな感情だって言っていた癖にそんな感情を抱いちゃった愚か者ですよ。でも…でも…好きになっちゃったんだからしょうがないじゃないですか!!」

堰を切ったように堪えていた涙が溢れ出す。
うーっと唸りながら、この感情は墓場まで持って行くつもりだったと言う告白に、蓮の肝は凍る思いをした。

「良かった…」
「なっ何が良かったんですか。人の失恋を何喜んでるんです!!敦賀さん酷いですーっ!!バカーっ」
「どうしてそうなるの?最上さんの気持ちが聞けて嬉しいのに。最上さんが俺と同じ気持ちで良かったって言ってるのに」
「同じ?」

どういう事だろうと困惑の表情を浮かべているキョーコに、蓮はふわりと蕩ける様な微笑みを向ける。

「俺も君が好きだよ」
「…ヒィッ!?」
「全く…人の一世一代の告白に何て声を出すの。でも、そんなところも含めて全部、君が好きなんだけど」

一体いつからだろう。気になって目が離せなくて。気が付いたらいつの間にか好きになってた。
自分の気持ちに気づいてからはどんどん心は君に浸食されて。もう君しかいらないと思う程にこの気持ちは成長してしまったんだ。

「ねぇ、キスしてもいい?」
「……。あとギュってしてください。敦賀さんにぎゅうって抱きしめてもらうの、私大好きなんです」

恥じらうようにモジモジと身を悶えさせながらそう呟くキョーコの姿に、蓮はピシリと固まった。

可愛すぎるだろうっ…。駄目だ。もう駄目だ。

「最上さん…」

キョーコを見下ろして蓮が少し開いた赤い唇に誘われるように、唇を重ねようとしたその時、部屋のチャイムが鳴り響いた。
ビクリと身じろいたキョーコが、かぁっと顔を赤く染めた。

「つつつ敦賀さん、誰かが来ました!あっきっと社長さんです!」
「…うん…」

なんてタイミングが良いのだろうか。蓮は内心ガックリと肩を落としながら掴んでいたキョーコを解放した。

きっとローリィ達が解毒剤か何かを準備して来てくれたのだろう。
ハァハァと荒い息を重ねるキョーコに、そのまま横になっているように伝えて蓮はベッドを離れた。


「ヨッ」
「解毒剤持って来てくれたんですね。ありがとうございます」

ドアを開ければ、相変わらずショッキングピンクのつなぎ姿のローリィが立っていた。スタジオの外でも着続けているところを見ると、余程つなぎが気に入ったらしい。
蓮は気を取り直してキョーコの状態を伝え、医者に診せたいと訴えた。

「やっぱり最上さんの体が心配です。騙されたとはいえ非合法な薬を飲んでしまったんです。どうにか秘密裏に医者に見せる事は出来ないでしょうか」
「それなら大丈夫だ。アノ薬を飲んじまった奴には衝撃を与えてやると正気に戻るらしいんだ」
「衝撃?」

ローリィの言葉に蓮の眉間にくっきりと皺が寄る。
まさかキョーコを叩けとでも言うのか。どんな理由があろうともキョーコに手を上げる事など死んでもしたくない。
人を傷つけるような真似は二度としないと誓ったのに。それを愛しいと思っている存在にどうしてできると言うのだろうか。

「で、だ。これをお前に授けよう。言わば陣中見舞だな」
「陣中見舞って…。何ですかこれは」
「ふー。これで安心。こればかりはお前も携帯して無かっただろうからな。急いで買って来たぞ」

渡された紙袋から取り出したモノを見て、蓮はくらりと眩暈を感じた。
その眩暈は怒りからなのか、それとも脱力からだったのか。どちらにしても蓮を混乱の坩堝に突き落とした。

…幸福の0.01ミリ…。

「社長……。これはもしかしなくても」

避妊具ですよね?

怒りからなのかそれとも虚脱感からなのか。蓮の頭のなかは真っ白になった。
白いパッケージに書かれた謳い文句を眺めて蓮は燃え尽きた。灰になった。

「蓮、今俺は社長ではない!ただの愛の伝道師だ。伝道師としてお前に一言だけ忠告してやる」
「はいはい。何ですか」

早くこの場から消えて欲しい。そうじゃなければこの摩訶不思議な愛の伝道師を力一杯殴ってしまう。
どうか俺に強靭な理性を…。耐えろ、俺。

「考えるな。感じろ」
「!」
「以上だ!」

まさかの伝導に蓮は再びがくりと項垂れた。その隙にローリィは悠然と部屋を後にする。

その顔にはやり切った達成感が浮かんでいた。
きっとその顔を蓮が見なかったことは、ローリィにとって幸運だったろう。もしも目の端にでも映っていたら、カイン・ヒールどころかB.Jの降臨によって惨劇が繰り広げられたはずだ。


…ここまでお膳立てされてた状態でどうしろと言うんだ。

ベッドに横たわったまま成り行きを見守っていたキョーコは、額に手をあてて大きくため息をつく蓮の後ろ姿に不安になり、恐る恐る声を掛けた。

「敦賀さん?社長さん、もう帰っちゃったんですか?」
「うん。もうあんな人の事は気にしないでいいから。それより最上さん、まだ苦しい?」
「んぅ…。はい苦しいです…もう、敦賀さんの事を考えるだけで胸がギューッってなってます」
「っ最上さんっ君って子は」

どこまで俺を煽れば気が済むんだ。

「苦しい…敦賀さん、助けてください。早く続き…ちゅーして?」

必死に蓮を見上げるキョーコの潤んだ瞳に、理性がぶつりと千切れる音を蓮は確かに聞いた。

「分かった。俺が助けてあげる…。でも痛かったらごめんね?」
「ふえっ…痛いんですか?」

眉を下げて、うりゅっと瞳に不安を映し出したキョーコに、蓮は言葉を重ねる。

「なるべく痛くないようにするから。それに痛いのは最初の1度だけ。それから先は一生痛みなんて感じさせないから。大丈夫。俺を信じて」
「はい。敦賀さんに全てお任せします」
「うん。…最上さん、愛してるよ」
「あっ愛!?」
「薬のせいとは言え、最上さんは心の内を正直に俺に教えてくれたでしょ?だから俺も正直に包み隠さず、君に俺の気持ちを全て伝えるよ」
「はい。教えてください」

キョーコは熱に浮かされたように頬を朱く染めて、ぼうっと潤んだ瞳で蓮を見つめる。

だから覚悟してね?

何か吹っ切れたような、キラキラと神々しい笑顔を湛えながらキョーコをその広い胸の中にすっぽりと覆い隠した。

「…ん……?…えっ? んっ……ッぷはぁっ!?つっ敦賀しゃん!?」









「んあーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」



目がチカチカするような衝撃と痛みと共に、キョーコが正気に戻ったのはその少し後の出来事。



おしまい。



Comment
ありがとうございます!
ナー様
またもや楽しいお話しありがとうございます!
最初は“自白剤”なんて出てくるから、まさか、サスペンス‼と思いきやギャグ満載の抱腹絶倒なお話しで(笑)
1話目がアップされたとき、「やった!短連載だぞ」と全話アップを待って一気に拝読させていただきました。
もう、3話目でにやけるにやける。
蓮さん告白のキョーコちゃんの「ヒィッ!?」なんで?(笑)もう会話で笑わしていただいて、本当になんとお礼を申し上げていいか。幸福の0.01ミリ・・・「考えるな。感じろ」もう許してください・・・・
ナー様のおバカ話ホントに大好きです。
次も期待しちゃいます!
こちらこそありがとうございます!
ひろりん様
コメントありがとうございますー!
おバカ話を楽しんでいただけたようで何よりです。
もう、社長にとことんおバカになってもらいました。
敦賀さんの告白を素直に受け止めるキョーコちゃんが想像できず、「ヒィッ」になってしまいました。
でもやっぱり敦賀さんには幸福を感じて欲しいですしね!(エヘッ)
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。