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   欲しかったモノ   


敦賀さん誕生日おめでとうございます!
そんな気持ちでアップです。



「あれ?…ププッ。敦賀さん」
「ん?どうしたの?」

蓮に凭れるようにソファに座りDVDを見ていたキョーコが、テレビ画面で無く視線を落として肩を震わせている。
必死に笑いを堪えているキョーコの視線を辿り、蓮が自分の足元を見て一瞬動きが止まった。

「…あ…」
「敦賀さん、靴下から親指がこんにちはしてます。ププッ」
「何だかカッコ悪いな」

苦笑しながら、穴の開いた靴下を脱ぐ蓮の耳がほんの少し赤くなっているのは気のせいだろうか。

「履き心地が良くて、ヘビロテしてたからかなぁ」
「…それ、気に入ってたんですか?」

アルマンディのロゴがない、無地の靴下をキョーコはじっと見つめた。

確かに洗濯物を畳むときによく見かける気もする。
一流ブランドであるアルマンディのモデルも務める蓮は、普段からアルマンディから提供される服や小物を身に付けている。いわば歩く広告塔だ。
それに着心地が良ければ何でも良いと身なりに頓着しない蓮は、品質、デザイン共に優れたアルマンディの服以外の物を身に付ける方が珍しかった。

「うん。でも同じやつがストックされてるから大丈夫」

確か未使用の色違いの靴下があったはずだと言いながら、クローゼットへと消えていく蓮の背中にキョーコは小さな溜息をついた。


**


「で?アンタは準備は出来たの?」
「うぅ…一応?」

ショッキングピンクのお揃いのつなぎを着たキョーコたちラブミー部員3人は、芸能事務所の地下室で、事務所に届いた蓮への誕生日プレゼントを段ボールに仕分ける作業を黙々と行っていた。
色とりどりのラッピングが施されたプレゼントの数々は、それぞれ送り手が蓮の喜ぶ顔を思い浮かべながら選んだ逸品に違いない。
手に取ったプレゼントをじっと見つめたまま、キョーコの動きが止まる。

キョーコも自分が選んだプレゼントに驚いて欲しい、喜んでほしいと。
果ては『欲しいと思っていた物をプレゼントしてくれるなんて、やっぱりキョーコは俺の事を何でも分かってくれてるんだね。さすが俺の彼女』などと、蕩ける様な笑顔を自分に見せてくれる蓮を妄想までしていた。
妄想を現実のものにすべく、キョーコは随分と前から張り切ってリサーチをしていた。

それなのに

洋服やネクタイ、果てはハンカチまでアルマンディからの無償提供で出来上がっている装飾関連に、キョーコがつけ入る隙なんて無かった。
やっと蓮のお気に入りの靴下が分かっても、ストックがあると言う。

「何をプレゼントしたらいいか決まらないのに、日にちばかり経っちゃって。もうね、切羽詰まっちゃって。。起き抜けの寝ぼけてる時を狙って本人に聞いてみたのよ」
「ふぅん。」

敦賀さんの寝起きの無防備な姿を知ってるんだ?しかもそんな姿を知ってる事を当たり前のように話してるって自覚、この子絶対に無いわね。
一体いつの間に清らガールを卒業したのやら。

「モー子さん?そんなジト目で見つめるなんて、私の顔に何か付いてる?」
「いーえ。何も。で?」
「そしたら、敦賀さん何て言ったと思う?歯ブラシよ!歯ブラシ!!」
「プッ!」

だから何が欲しいか全然分からないうちに、とうとう誕生日当日がやって来てしまったのだと、キョーコはしょかえった。

「京子さん、あなた敦賀さんの事何も分かってないのね」
「へ?あっ天宮さん?」

奏江の隣に座り黙って話を聞いていた千織が、憐れむような視線をキョーコに向けていた。

「バカみたい。敦賀さんが欲しいものなんて丸わかりじゃないの」
「そうよね。よくもまぁ気づかないもんね」
「嘘っ!?モー子さんまで分かっちゃってるの!」

ショックを隠せないキョーコは茫然と2人を眺めるしかない。

「よし。いつもお世話になってる事だし、私も敦賀さんにプレゼントを用意しようかな」
「そうね。私もこの業界に太いパイプ欲しいし」

ちょっと見繕ってくるからあんたは1人で作業を続けてなさいと、理不尽な言葉を言い残して2人は揃って部室を出て行った。

そんな簡単に蓮が欲しいものが分かる上に、それがちょっと見繕う程度で手に入る物だと言う事にキョーコは打ちのめされた。
2人には簡単に分かるようなものが、自分には全く分からない。蓮の欲しい物1つ浮かばない自分が本当に蓮の彼女なのだろうか。
ぐるぐると負の思考スパイラルに嵌まりかける。

「っいけない。駄目よキョーコ!レッツ・ポジティブ!!」

泣きべそをかきそうになったキョーコは、自分に喝を入れようと両の頬をペシペシと叩いて気合を入れ直した。

折角の蓮の誕生日なのだ。
蓮に1番喜んでもらえるプレゼントを用意したいけれど、それより蓮の誕生日を心から祝える気持ちの方が大事ではないか。

ご馳走の下準備は出来ている。ケーキだってスポンジは朝のうちに焼いてきた。プレゼントは1番になれなかったとしても、誰よりも蓮の傍で心から祝う事は出来るはずだ。
今夜、とびきりの笑顔で蓮の誕生日を祝ってあげようと考えながら、うず高く積まれたプレゼントを段ボールに詰める作業を進めた。




「お誕生日おめでとうございます。あの…コレ、プレゼントです」

キョーコが腕によりをかけて作った料理を2人で食べた後、キョーコは後ろ手に持っていたプレゼントを恐々と蓮に差し出した。

「ありがとう。開けてみていい?」
「はい。勿論です」

ラッピングを解き、そこから現れたプレゼントに蓮はクスリと笑った。

「これはジューサー?」
「はい。電気屋さんイチオシのジューサーです」

蓮へのプレゼントを悶々と考えていた時、以前キョーコが社の代理で蓮のマネージャーを務めた時、風邪を引いた蓮の為に作ったスタミナジュースの味に悶絶していた姿をキョーコは思い出した。
このジューサーで絞ったジュースには野菜の繊維質が入らないらしく、飲みやすいジュースが搾れるのだと言う。それに果物や野菜の酵素を壊さないので、栄養を損なわずに丸ごと摂れるらしい。
それなら栄養満点な上に、味も美味しいスタミナジュースが出来るはずだ。

まるで家電売り場の店員のように、ジューサーの性能をこれでもかと話すその端々に、食に興味を持たない蓮の健康を気遣ってくれているキョーコの思いをひしひしと感じ取っていた。

「色々と俺の為に考えてプレゼントを選んでくれたんだね。キョーコ、ありがとう」
「……」
「キョーコ、どうしたの?」

返事のない事を蓮は不思議に思い、取扱説明書から顔を上げてみれば、キョーコは俯いてギュッとスカートを握り締めている。
表情は窺えないが、肩を小刻みに揺らしている様子に蓮の表情は一瞬で曇った。

ついさっきまでジューサーの性能について鬼気迫る程の勢いで語っていたのに、一体どうしたと言うのだろうか。
慌ててキョーコの正面に座り直して、蓮はキョーコの肩を掴んだ。

その拍子にぽたりと零れ落ちた涙がキョーコの手の甲で弾けた。

「キョーコ、どうしたの!?俺、何かキョーコを傷つけるような事言った?ごめんね、キョーコ。謝るから泣かないで」
「違います!…違うんです」
「じゃあ、どうしたの?」
「…ずっとずっと、敦賀さんに何をプレゼントしようかって考えてて」
「うん」

涙を堪えようと、唇を震わせながらたどたどしく語るキョーコを蓮は優しく促した。

「敦賀さんが欲しいって思ってるものをあげたいって思って、私ずっとリサーチしてたんです」
「そうだったんだ。全然気が付かなかったよ」
「それなのに私、全然分からなくて。私、敦賀さんの彼女なのに、敦賀さんが一番欲しいものが全然分からなくて!いっぱいいっぱい考えたのに、これっぽっちも分からないうちに誕生日が来ちゃったんです。昼も夜も寝ても醒めても、果ては夢に見るまで敦賀さんの事を考えたのに!!」

そう言ってキョーコは蓮の背中に勢いよく腕を回して、その勢いのまま額を蓮の胸にグリグリと押し付けた。

「キョーコ、顔を上げてよ。俺に顔を見せて?」
「敦賀さんの生まれたおめでたい日に、こんな不細工な泣き顔なんて見せたくないんです」


顔を伏せたままぎゅっと蓮のシャツを掴むキョーコの髪に頬を寄せて、蓮はキョーコの背中を包み込む様に抱きしめた。

「ねぇ、キョーコ。俺、今凄く嬉しいんだけど。天にも昇る気持ちっていうのが今分かったよ」
「何でですかっ!」
「怒らないでよ。だってキョーコ、俺の事で頭を一杯にしてくれてたって事でしょ?俺への気持ちがキョーコの中には一杯詰まってるんだよね?」
「もうパンパンです。他の事なんて考えられる余裕なんてちょっとの隙間もありません」

一体何を言い出すのかと、キョーコが鼻をスンッと一つ鳴らしてそろそろと顔を上げて見れば、蓮は目を細めてキョーコを見つめていた。
それも、キョーコが妄想したような、キョーコを蕩けさせるような甘やかな微笑みだった。

「敦賀さん?」
「キョーコ、信じて。俺すっごく嬉しいよ。すごく…すごく欲しかった」

俺が何を望んでいるのか、欲しいと思っているのか。何をしたら俺が嬉しがるか。
そんな風に俺の事だけを考えてくれたって事が凄い嬉しいんだよ。しかも夢に見る程なんて。

ねぇ、今俺がどのくらい舞い上がってるかキョーコは分かってる?

「それじゃあ、このジューサーと一緒に、俺への気持ちを詰め込んだキョーコも俺に頂戴?」
「…敦賀さん何言ってるんですか。そんなの、もうずっと前から敦賀さんに捧げてます」
「~~~っあぁ、もう!!」


俺が舞い上がるような一言を、君はどうして何てこと無いように言えるんだ。
俺がこの子に勝てる日は来ないかもしれない。


それがどうしたのかと、小首を傾げて蓮を見上げているキョーコの頬に、チュッとリップ音を立てたキスを1つ落とした。

「ひゃぁっ!?」
「誕生日プレゼントありがとう。一生大切にするよ」
「ジューサー、本当に喜んでくれたんですね?良かったぁ。あ、でも一応敦賀さんが欲しいって言っていた歯ブラシも用意したんですよ?」
「歯ブラシ?」
「えぇっ!?今一番欲しい物じゃないんですか!?」
「ううん!もっ勿論覚えてるよ。そろそろ歯ブラシを買い替えないといけないなって思ってたよ。キョーコとお揃いのね」

俺が一生大事にすると言ったモノを勘違いしているみたいだけれど、まぁいいか。
キョーコに笑顔が戻った事の方が大事だ。

「明日の朝、このジューサーで美味しいジュース作ってくれる?」
「はい!承りました!!」


蓮の腕の中で満面の笑みを浮かべるキョーコに、蓮は楽しみだなと笑った後、ありったけの愛情を込めた口づけを落とした。



おしまい。





モー子さんたちが何をプレゼントに選んだかは、そのうちおまけで書きます。



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