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   コングラッチェ 40   


卒業式シーズン到来ですね。
コングラもとうとう卒業です。
残り1話予定ですので、あとちょっとお付き合いくださいませ。



「…最後になりましたが、宝田学園長はじめ諸先生方のご健勝と、学園のさらなる発展を祈念し、卒業生の答辞といたします。卒業生代表、最上キョーコ」

答辞を読み上げて一礼し、キョーコは壇上から卒業式の会場となっている体育館全体を見渡した。
LME学園高等部の卒業式で、元生徒会長のキョーコは卒業生代表として答辞を任され、それを今やり遂げたのだ。

半ば仮装パーティ会場と化している卒業生席の一番手前、キョーコの所属している1組の席には、キョーコと同じ制服姿の千織がほっとした顔で微笑んでいる。
その少し先では、3人で揃えたらしい袴姿の留美たちが笑顔で手を振っている。教員席からは蓮や社、奏江たちがキョーコを見守ってくれている。


本当に卒業しちゃうんだな…。


キョーコは自分がこの学園を卒業する事をやっと実感していた。

志望校の最難関大学への入学を賭けた二次試験を終えてから、まだ数日しか経っていない。
ようやく終焉を迎えた受験勉強からの解放感を味わうことも無く、すぐに卒業式で読むことが決まっていた答辞の作成を余儀なくされていた。

ネットで調べれば、答辞の文例など溢れている。それを使ってしまえば半日で済ます事は出来ただろう。
でも、キョーコはそれをしなかった。

自分の言葉で3年間を振り返りたい。
卒業式を終えたら、合格発表までの数日間は答辞を考えた分を上乗せして思う存分遊ぶのだ。

そう言って、前日までの受験勉強と同じ体勢で机の上にノートを広げ、うんうんと唸るキョーコの姿に千織たちは苦笑した。
確かにキョーコらしいと思うし、何事にも手を抜かずに一生懸命に向かうキョーコを止める理由など無かった。

そのお陰でキョーコは3年間を、自分なりにじっくりと振り返る事が出来た。
辛かった事もあった気もする。でも、それが全て『最上キョーコ』を作り上げるために必要な出来事だったのだと、キョーコは確信していた。

晴れ晴れとした気持ちで、キョーコは壇上から降りて、自席へと戻った。


大任を無事にやり切り、あとは退場を待つだけとなったキョーコに、隣の席から紙袋が渡って来た。

「1つ取ってまわしてだって」
「うっうん」

言われるがまま小袋を1つ摘んで、紙袋を隣へと流した。

『…卒業生、退場』

キョロキョロと周りを見れば、みんな楽しそうに小袋を持ってその瞬間を今や遅しと待ち構えている。

えと、本当にやっちゃうのかな?後で問題にならないのかな?
…でもどうせ今日で卒業だし、問題になってもいっか。それに本当は私だってやりたかったんだもん。皆の顔を見れば同じ気持ちの筈よね。
よし!怒られるときは卒業生一同よ!!

覚悟を決めたキョーコの目も、他の卒業生たちと同じようにキラキラと輝いた。


『3年1組、起立』

キョーコたち卒業生が壇上に向かって一礼、後方に向き直って在校生に一礼した後『せーの』という誰かの掛け声と共に、卒業生の手から投げ出された何かカラフルな物が放物線を描いて宙に舞った。
キョーコも手にしていた在校生へのプレゼントを力強く、思い切り遠くへと投げた。

きゃーーっ!

在校生の席のそこかしこから歓声の中、1組の卒業生たちが笑いながら喧騒の渦と化した体育館を去っていく。
ちらりと見える教員席の面々も、弱り顔だが本気で怒っている様子はない。禁止された筈の卒業生からのプレゼントが降り注ぐことは、ある程度想定していたのだろう。
苦り顔を作っている飯塚教頭の口元が笑って見えるのは、きっと気のせいではないはずだ。
最後に沢山の共犯者たちとの思い出がまた1つ作れた事を心に刻んで、キョーコ達卒業生はスキップで卒業式の会場を出た。


教室に戻ったキョーコたちは、最後のホームルームで担任の蓮を囲んで記念撮影を取って解散となった。

キョーコがちらりと蓮を見れば、これが最後とばかりに蓮との別れを惜しむ生徒たちに囲まれている。
これからも毎日顔を合わせる自分とは違い、卒業生が蓮と会うことはほぼ無いだろう。少しでも蓮と話をしようと取り囲んでいる生徒たちに、キョーコは気が引ける気がした。

「私は友だちとお昼食べてからカラオケ行くけど、キョーコさんは?」
「うん。私はもうちょっと学校にいるね」

最後に学校の景色を目に焼き付けてから返ると言うキョーコに、千織は分かったと言って教室を出て行く。
こんな風にいつも自分の事を気にかけてさりげなくフォローしてくれる千織に、キョーコはいつも頼りっぱなしだった。

「天宮さん!」
「何?」

急に呼び止められて怪訝そうに振り返った千織に、キョーコは深々とお辞儀をした。
千織はギョッとして慌ててキョーコの傍に駆け寄って、下を向くキョーコの額を力一杯押し上げようとするが、キョーコの姿勢は全く変わらない。

「ちょっといきなりなん何よ。恥ずかしいから止めなさいよっ!」
「…天宮さん、本当にありがとう。私、天宮さんの友達で本当に良かった。この3年間、本当にお世話になりました」
「止めてよっ。あなたとは明日からだって顔付き合わせるんだからね?」

きっと一生付き合っていく仲なのだ。兄嫁として。それにバカな兄のお守りをしてもらっているつもりはあるけれど、自分がキョーコの事を世話したつもりは一度も無い。
そんなキョーコに改めて頭を下げられるなどとは思ってもいなかった千織は、本気で慌てていた。

「そんなことしなくていいから!!今日の夕飯はパーティ仕様なんでしょ?早めに帰るから!!」
「うん。待ってるね」

照れ隠しに走って廊下へと向かう千織に、キョーコは頭を上げて笑顔で手を振った。


**


皆との別れを一通り済ませた後、キョーコは生徒会室に保管されている鍵を失敬して屋上へと来ていた。
普段、立ち入り禁止となっている場所で屋上には誰もいない。

「こら。屋上は立ち入り禁止だよ?」
「先生…」

振り返ると、困ったように笑いながら蓮が立っていた。

「本当に…。不破君には最後までやられっぱなしだったよ」
「え?ショーちゃんまた何かしたんですか?」

今日、卒業生たちが投げ込んだプレゼントは何とショータローを中心にしたメンバーが用意したものだった。
その中身はお菓子だったり、リップクリームやヘアワックスなど、一応、後々大問題となるようなモノは入っていなかった。

プレゼントを投げずに何が卒業式だと口を尖らせるショータロー達の耳を、飯塚教頭が最後の思い出だとばかりに思いっきり捩じり上げたらしい。

「あははっ。最後まで教頭先生を怒らせるなんて、ショーちゃんらしいですね」
「本当だよ」

耳を真っ赤にして悶えているショータローを想像して、キョーコはクスクスと笑った。

「1年か」
「え?」

蓮がぽつりと呟いた一言にキョーコは首を傾けた。

「俺が最上さんに告白した日から。あの日から俺は攻めの一手で、なんとか最上さんの心を俺に向けさせようと必死だったよ」

ショータローへの恋心をビリビリに引きちぎられたキョーコの姿に、蓮は堪らず抱きしめて告白をした日。
その日からずっとキョーコを逃がさないようにと両頬にそっと両手を添えて、どうにか自分を見てもらおうと泳ぐ視線を捕えようとし続けた。
キョーコもきちんと蓮と向き合い、自分を認めてくれる大きく温かい愛情に包まれている事が心地よく感じている自分に気付いた。

1年の間にこんなにも恋心が育ってしまった。
この人の手を放したくない。

「答辞を書くために3年間を振り返ってたんですけど、この1年の事を思い返すのが大変だったんです」
「どうして?」

この1年間の出来事の中心で会ったり、そのすぐ傍に。キョーコの隣にはいつも蓮がいた。
その事を思い返しても答辞に盛り込むわけにもいかないのに、勝手にその時の情景が鮮明に頭の中で再生されてしまい停止ボタンが効かなくなるのだ。
だから3年生の時の出来事を書くのに時間がかかった割には、ありきたりなものになってしまったとキョーコは苦笑した。

「ここから始まったんですよね。ある意味バカショーのお陰で」
「そうだね。不本意ながら、最上さんと付き合うきっかけを作ってくれたのは不破君か。本気で不本意だな…」

嫌そうに顔を顰める蓮にキョーコは思わず噴き出した。

「そろそろ帰ります」
「じゃあ一緒に帰ろう。校門を出たところで待ってるよ」

帰って夕飯の準備をすると言うキョーコに、蓮は最初で最後、2人で学校から帰ろうと蓮が提案した。
最後のお別れが済んだらおいでと、蓮はキョーコより先に校舎内へと入って行った。

蓮が去った後、キョーコは誰もいない屋上をぐるりと一周してドアの前に立つと、ガバリと身を折った。
そして、すぅっと大きく息を吸い込み、大きな声で最後の挨拶をした。

「お世話になりました!!」


**


キョーコが校舎を出ると、校門の先から女子達の黄色い声が聞こえてきた。
どうしたのだろうかと視線を向けると、校門の外で蓮が女子生徒たちに囲まれていた。

制服や袴姿の子もいれば、部活中の在校生だろう、ジャージ姿の子たちも混ざっている。
教室で卒業生たちに囲まれた蓮を見た時は、なんとなく微笑ましく思っていたのに、蓮に恋い焦がれる女生徒たちに囲まれた様子はちょっと悔しい。
ずっと今まで学校内では蓮には必要以上に話しかけないようにしてきたのに。我慢していたと言うのに。

なら、最後は我儘をして困らせてもいいかな?

そんな悪戯心がジェラシーに刺激されて、キョーコの中で一瞬にしてムクムクと成長した。



「先生!!」


黄色い声を遮るような大声に、蓮を取り囲んでいた女生徒たちが何事かと振り返ると、自分たちに向かってキョーコが勢いよく駆けてくる。
蓮は自分めがけて走ってくるキョーコに両手を広げた。
勢いそのまま、キョーコはドンッと蓮の胸に飛び込んで、その広い背中に腕を回してぎゅっと掴んだ。

女生徒たちが唖然と見守る中、蓮はキョーコが見せた独占欲に思わず笑みを零した。

「最上さん、卒業おめでとう」
「ありがとうございます!」



つづく。




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