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   コングラッチェ 41   


やっとここまでこぎ着けました。
コングラッチェ、最後です。しかも長っ。
それでも楽しんでいただければ幸いです。



よし、時間よ。落ち着いて、落ち着いて見るのよ。

キョーコは自分に言い聞かせながら、まるで全力疾走をしているかのように、ドキドキと大きく早く脈を打つ胸に手をあてて、すぅっっと大きく深呼吸をする。

その手の内には、センター試験前日に蓮から貰ったお守りがあった。

センター試験からずっと肌身離さず持っていた、桜柄のポチ袋は大分くたびれて、よれて毛羽立っている。
このお守りを通して蓮が見守ってくれている。だから大丈夫なんだとお守りを握り締めて大きく深呼吸をすれば、それまでの焦りや不安がほど良い緊張感に変わり試験に集中できた。

キョーコはお守りを固く握り締めて、もう一方の手でスマホで志望校の合格発表サイトをタップした。


どうか合格していますように。どうか自分の番号がありますように。


ひたすら願いながら、合格者の受験番号を目で追っていく。



「…あった…」



間違いない。
何度照らし合わせても、机に置いた受験票にかかれた番号と同じものが載っている。
他の番号よりも一際大きく、そして光って見えるのが気のせいだとしても、受験票など見なくてもとうに暗記してしまった数字の羅列は間違いなくキョーコの受験番号だ。

「あった…」

良かった。本当に良かった。受験中ずっと不安だった。独学でなんて片意地張らずに千織と一緒に予備校に行っておけば、受験テクニックも教えてもらえたはずなのに。キョーコよりもっといろいろな事を他の受験生は学んでいるかもしれない。
そんなマイナス思考を振り払うように猛勉強したのは、無駄ではなかったのだ。

押し寄せてくる喜びに、キョーコはもう一度、今度は大声で叫ばずにはいられなかった。


「あっ「このエメンタールチーズ脳がっ!!」」


喜びの雄叫びをかき消す大音響に、キョーコは固まった。

そうだ、この家にはもう1人受験生がいたのだ。それも自分にとってかけがえのない友人も、きっとキョーコとほとんど同じタイミングで合格発表を見たに違いない。
その千織の怒気を孕んだ絶叫は、とても合格を喜んでいるとは思えない。

キョーコは慌てて部屋のドアを開けてリビングへと駆け込むと、鬼と化した千織がそこに居た。
怒りで全身を震わせ、眉間の皺は過去最大級の溝を刻んでいる。


「天宮さんどうしたの!?」
「どうもこうも無いわよ!!」
「まっまさか…」

まさか不合格だったのだろうか。キョーコも今の今まで自分の事でいっぱいで、千織の合否まで調べていなかった。
学部は違えど、春からも同じキャンパスに通うつもりでいたキョーコの顔からさぁっと血の気が引いて行く。

「何想像してんのよっ!私が不合格になる訳ないでしょ!!合格したに決まってるじゃない!」
「なんだぁ~~。良かった~。」
「良くないっ!あのバカ本当のバカなんだから!!」

安堵して目に涙まで浮かべてへたり込むキョーコを見下ろす千織の視線は冷たい。その上歯ぎしりまで聞こえてきそうだ。

憤慨し続ける千織の話をよくよく聞けば、千織と同じ予備校に通っていた1年先輩の村雨が第一志望校に落ちたのだという。
自習室でよく会うのをきっかけにして段々と言葉を交わすようになり、参考書の貸し借りをしたり村雨が躓いた問題を千織が教えたりしていたらしい。


第一志望校に合格したら、俺と付き合う事を考えて欲しい。


そう村雨に言われたのは、10月の模試で村雨が志望校に初めてA判定が出た時だった。
村雨に対して全く恋愛感情を持っていなかった千織は驚いたが、合格発表後に考えればいいとあまり気にも留めていなかった。
そんな告白があった後も、2人は自習室で机を並べて受験勉強をしていた。

「第2志望は合格してるから、それで手を打つとか言ってんのよ?男としてどうなの!?ちょっと先輩にジャンピングニーきめて来るわ!!」

頭を殴ってこれ以上バカになっても困ると言い残して、千織が嵐のように部屋を出て行くのをキョーコは茫然と見送った。


2人は付き合うことになるのだろうか。
高校時代の村雨は面倒見が良い兄貴分だった。きっと慕われていたのだろう。沢山の友人や後輩に囲まれていた姿を思い出すと、怒った千織を宥めすかす村雨と満更でもなさそうにしている千織たちの様子が頭に浮かんだ。
もしかしたら、意外とお似合いのカップルになるのかもしれない。

「カップル … あっ忘れてた!」

蓮に合格したことを早く伝えねば。

きっと蓮も学校の職員室で合格発表サイトを見ているはずだけれども、誰よりも一番に自分の口で知らせたい。
そう思いながら、キョーコは蓮に電話をかけた。


**


「最上さん合格おめでとう!」
「ありがとうございます」

職員室に入ると、キョーコの明るい笑顔を見た教師たちが拍手で迎えてくれた。社や奏江には、千織も合格したことを伝え、日を改めて合格パーティをしようと盛り上がった。

一通り挨拶を終えて周りをキョロキョロと見回すキョーコに、社は笑った。

「敦賀先生なら今は授業中だよ」

時計を見れば12時半を過ぎている。あと10分もすれば授業も終わる。

「もしも最上さんがお昼前に来たら、例の場所で待っててほしいって伝言を言付かってたけど、意味わかる?」

きっと屋上の事だろう。頷くキョーコに、2人しか知らない例の場所があるなんてヤラシイと、己の体に腕を回して身悶える社を奏江が冷めた目で見ている事も気に留めず、キョーコは足早に職員室を後にした。


屋上で1人、キョーコは晴れ晴れとした気持ちで空を眺めていると、聞きなれたチャイムが鳴り響いた。
この音も聞き納めだと、少し感傷的になっていたキョーコの元に蓮が現れた。

「ごめん、待たせたよね」
「いえ。私も今来たところです」
「そう…。電話でも言ったけど、あらためて合格おめでとう」
「はい。ありがとうございます」
「良く頑張ったね」
「はい!」

キョーコは蓮に満面の笑みを浮かべながら合格したことを伝えた。
勿論千織も合格したことを伝えれば、ほっと大きな安堵のため息をつく蓮を見て、やっぱり何だかんだ言いながらも妹の事が大好きなお兄ちゃんなんだなぁと感心した。

そんな事を想っていると、蓮はポケットから小さな鋏を取出してキョーコに差し出した。
鋏で何をするのだろうか。不思議に思い蓮を見上げれば、センター試験の時に渡したお守りを開けようと言い出した。

「あの日から肌身離さず持ってるでしょ?」
「確かに今も持ってますけど」
「願いが叶ったんだから、お守りの役目はしっかりと果たしたよね」

確かに蓮お手製のお守りの中身はずっと気になっていた。一体何が入っているのだろうか。
好奇心も手伝って、キョーコは蓮の手から素直に鋏を受け取り、コートのポケットに忍ばせていたお守りを取り出した。

キョーコは自分を支え続けてくれたポチ袋に『ありがとうございました』とお礼を言って鋏で封を開けた。

中を覗いてみると、小さく畳まれた紙が入っている。もしや蓮が合格祈願をしながら写経でもしてくれたのだろうか。
そんな風に思いながら取り出した紙を広げていたキョーコの手が止まった。


「せん せ … これ」


驚き過ぎて喉から声が出てこない。
朝、合格サイトで受験番号を探した時よりも、もっと大きく心臓が跳ねているに違いない。

「うん。見間違いじゃないよ。正真正銘、婚姻届だよ」

ただの婚姻届ではない。キョーコの署名欄以外、すべての欄が記載済みなのだ。
それだけではない。証人欄に記載されている名前からキョーコは目が離せない。

そこにはテンの名前と、キョーコの母である冴菜の名前が、キョーコの記憶に残っている母の神経質そうな文字で丁寧に書かれていた。

先生、一体いつの間に?いつから結婚なんて考えていたの?どうやって母を説得したの?母は何て言ってたの?

色々な疑問がキョーコの頭の中を駆け巡るけれど、喉が引き攣ってとても言葉には出来なかった。
ただただ、見開いた眼で婚姻届を見つめる事しかできなかった。

「お母さんには、会えなかった三者面談の後からずっとアプローチしてたんだ」

最初は相手にもされなかった。名乗った途端に電話を切られるこ日々だった。
それでも蓮は、毎日のようにメールや電話でキョーコの近況と共に、自分が本気でキョーコをこの先護って行きたいと思っている事を冴菜に訴え続けた。

返事は1つも無かったが、蓮からの連絡を拒絶するように電話番号もメールアドレスも、変えられることはなかった。

そして季節が冬に変わりキョーコの誕生日が目前に迫った頃に届いたエアメールには、証人欄に冴菜の名前が書かれただけの婚姻届が1通だけ入っていた。

しかも提出日の欄には、母の字でしっかりと4年後、キョーコが大学を卒業する年の誕生日が書きこまれていた。

それまでに2人の関係が変わるかもしれない。高校と言う小さな世界から飛び出すキョーコの前途には、無限の可能性が広がっている筈だ。
もしかしたらそこで蓮より心を惹かれる男性に出会うかもしれない。蓮にも、出会いがあるかもしれない。

それでも。

それでも変わらずにキョーコを幸せにする気があるのなら。共に歩きたい気持ちが深まっていたなら2人の結婚を許すという事らしい。

「お守りだなんて、何てモノを握らせてたんですか。おかげでしわくちゃですよ」

そう言って頬を伝う涙を拭う事もせず、キョーコはバッグからペンを取り出すと、折り目がびっしりと入っている婚姻届の署名欄に、大きく自分の名前を書いた。

キョーコの心を最優先にして、合格発表の今日まで蓮はキョーコに寄り添って来た。きっとこの先も寄り添ってくれるだろう。
だったら、自分も蓮に寄り添って歩んでいきたい。そうキョーコは思い、迷いなく署名した婚姻届をじっと眺めた。

「そうだ。合格発表とお母さんから合格祝いを貰った事をお父さんにも報告したいです」
「うん。それじゃあ、俺も連れてってくれる?」
「勿論です」

次の休日、蓮と父の墓前に報告しよう。
都合がつけば、きっとテンや千織も一緒に来てくれるだろう。もしかしたら、村雨も一緒かも知れない。
沢山のお稲荷さんを用意して持って行こう。いつも一人で会いに行っていたから、大人数にびっくりするかもしれないけれど、きっと父も喜んでくれるはずだ。

母には記念撮影した写真を送ろう。もしかしたら父も移りこんでくれるかもしれない。
くすりと笑って、キョーコは手にしていた婚姻届を基の通りに畳んで、もう一度よれよれのポチ袋に入れようとした時、まだ何か入っている事に気が付いた。


何だろうか。不思議に思いつつ薄いビニールに包まれたそれを取り出した瞬間、キョーコの動きが止まった。それに涙も一瞬で引っ込んだ。


「あ。俺の煩悩がもう1つ出てきた」
「…先生…私、これを見た事があります」

そうよ。去年、卒業式の体育館でしげしげと見つめたわよ。
グミかな?ティーバッグかな?なんて。どうして裏なんて書いてあるのかな?とか思ったわね。

「それ、去年の卒業式で最上さんが俺の顔に投げつけたやつだよ」

1年前にキョーコと蓮が急接近するきっかけとなった、卒業生からのプレゼントとして在校生にばら撒かれた避妊具。
そんなものを蓮が大事に取っておいていたと言う事に、キョーコは吃驚するやら情けないやら。プルプルと体を震わせた。

「もーーーーーーーっ!今までのロマンスが台無しです!!!!」
「ね、俺の煩悩の塊でしょ?」
「しかも私、知らずにずっと握り締めてたなんて、恥ずかしすぎます!!」
「そう言えば街中にある自動販売機で売ってるのって、販売機の熱で劣化してるから破けるっていう都市伝説あるよね。最上さんの熱でそれが劣化していたら大変だ。早く使わないとね」

蓮の笑顔に、キョーコはがくりと項垂れた。
その頭をよしよしと慰めるように撫でると、蓮はキョーコをすっぽりと包む様に抱きしめる。

「やっぱり先生だなぁって思います」
「そう?褒め言葉として取っておくよ」

いつもこうやって私の心を軽くしてくれる先生の事が大好きなんだ。きっと先生にブンブン振り回されることになるんだろうけど、それが嫌じゃなどころかワクワク心が弾んじゃうんだ。
この先も、きっとずっとずっとその先の未来も。

キョーコが苦笑いを浮かて見上げれば、蓮の愛情が籠った優しい視線にぶつかれば、キョーコの顔もふよふよと楽しい笑いが浮かんでしまう。

「最上さん、合格おめでとう」
「ありがとうございます!」



コングラッチェ!!




完。





ナーのおバカ高校時代の思い出から始まったコングラ、予想以上に延びましたが、これにておしまいです。
ここまで見捨てずにお読みくださり、ありがとうございました!!




Comment
完結おめでとうございます。
コングラッチェの蓮先生とキョコちゃん。
しっかりとした土台の上で、幸せな未来を築きそうですね。

落とし主がすぐにわかるものと一緒にアレを落とさずに済んで何よりでした。お守りを落とすなんて縁起でもないですしね。(笑)

春休みのキョコさんは、先生のイチャベタ願望に応える日々となるのでしょうね。(´ ▽`)

春になって大学生になれば、少しづつ女性として開花していき、蓮先生も大変になりそうですが・・・・イキイキと俺彼氏アピールに走りそうな気もします。

素敵なお話をありがとうございました!
ありがとうございます!
まじーん様

完結までお付き合いありがとうございました!
やっぱり最後までドタバタでしたが、この先もいろんな人に温かく見守ってもらえる2人であってほしいなと。

確かにお守りを落としてたら大変なことになってましたね!
周りが阿鼻叫喚です。キョーコちゃんはきっと憤死してたでしょうねー。
でも先生はシレッと、ばれちゃったねとか嬉しそうに言いそうです。もう俺以外に嫁の貰い手も出てこないから、
早くサインしようか。とか。先生恐るべし。

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