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   偶然と必然 ホワイトデー迷走曲   


ドタバタバレンタインだったので、対でドタバタホワイトデーです。
最初と最後は、バレンタインに義理チョコを渡していた営業部の吉野さん目線です。


ハムハムハム …。

「貴島さん、私の顔に何かついてますか?」

頬杖をついて向かいの席からじっと自分を見ていた貴島に、『お前も仕事しろよ』と心の中でつぶやきながら、吉野はにこやかに話しかけた。

「ううん。カスがポロポロとこぼれてるなぁと思って」
「あちゃぁ。早く言ってくださいよ」

下を見れば、キーボードの上に食べかすが散らかっている。
慎重にそっと摘まないとキーボードの隙間に落ちてしまい、取り出すのが厄介になるのだ。
吉野は慌てて食べかけのクッキーを口に放り込んでティッシュを摘んだ。

「それにしても吉野ちゃん、本当に美味しそうに食べてたね」
「だって本当に美味しいんですよ。ホワイトデーさまさまです」
「ホワイトデーって言うか、敦賀さまさまでしょ」
「そうですね。あ、貴島さんも食べます?」

営業補佐の吉野が、会議から戻って一息ついていた貴島に透明の小袋に入ったクッキーを手渡そうと掲げた。
抹茶にチョコ、プレーンにはクランベリーが入った3種類のクッキーは、どれも芳醇なバターとアーモンドパウダーが効いた極上の味わいだ。

「いらない。俺が食べた事を知ったら敦賀君に殺されちゃうよ」
「温和な敦賀さんが余ったクッキーを貴島さんが食べたくらいで?そんな小さなことで怒りませんよ」

それでもいらないと言うのなら自分で食べようと、吉野は掲げていたクッキーをホクホク顔で自分の机に置いた。
机の上には営業部男性社員一同からのホワイトデーのプレゼントと、色とりどりのクッキーが詰め合わせにされた、水色のリボンがかかった透明な袋の小山が築かれている。

こんなに美味しいクッキーが文字通り山ほど貰えるとは何て役得なのか。
今朝、蓮に頼まれた時はどんな嫌がらせかと思ったが、今は最高のホワイトデーだと吉野はクッキーを頬張る。

「だってソレ、敦賀君の彼女お手製だろ?」


**


「買い物ですか?」
「うん。すっかり忘れてたけれど、明日ホワイトデーだった」

蓮の部屋でココアを飲みながらくつろいでいたキョーコに、蓮はウッカリしていたと笑った。
義理とは言え、営業部以外の知り合いや取引先で紙袋一杯のチョコレートを貰ったのだ。
そのお返しを準備しなくてはと、蓮はキョーコを買い物に誘った。

女の子はどんなお菓子を貰ったら喜ぶだのろう。
流行のお菓子など、スイーツ全般にそれほど興味のない蓮には全く分からない。キョーコなら分かるのではと聞いてみれば、自分の守備範囲は駄菓子なのだから分かる筈がないと胸を張って答える。

やっぱりデパ地下の洋菓子店を覗こう。

「去年と同じギモーヴじゃひねりが無いかなぁ」
「ひねりが欲しいなら、手作りクッキーとかどうですか?」
「え?俺が作るの?」

蓮のような生活臭がしない人から手作りのお返しなんて、きっと貰った人もびっくりするに違いない。
それにクッキーなら材料をまとめて焼くだけだ。分量さえ間違わなければ料理初心者の蓮も失敗しないはずだとキョーコは大いに乗り気だ。

「キョーコが手伝ってくれるって言うならそれもいいかな。でもうち、電子レンジしかないけど大丈夫?」
「そうでした!電子レンジでご贈答に耐えるクッキーなんて焼いた事ないわ。あぁ…どうしよう…」

もうキョーコの中ではクッキー作りは決定していたようだ。
電子レンジでは焼けないのだろうか、そもそもクッキーの材料として何を揃えればいいのだろうかと、蓮はスマホで調べ始めた。

「それじゃあ私の家で作りましょう。良く考えたら、この家に計量カップとか粉振いも無いですもんね」
「えっ?」

それにキョーコの家の備え付けオーブンなら、一度に天板2枚分のクッキーが量産できるはずだ。3回も焼けば十分だろう。
そうと決まったら早くスーパーに寄ってクッキー作りをしようと、キョーコは楽しそうに蓮に手を伸ばした。

「いいの?」
「何がですか?」

スマホを片手に座ったまま驚いたようにキョーコを見上げている蓮に、キョーコは不思議そうに小首を傾げた。

今までキョーコが蓮を自宅に誘った事は一度も無かった。その事に不満が無いと言えば嘘になる。
なんとなくキョーコに線を引かれている気がしたし、それを寂しいとも思っていたけれど、敢えて口に出すことはなかった。

「良いも何も。早く行きましょう」
「うん」

それなのに、今キョーコはあっさりと蓮を招き入れようとしてくれている。
蓮が感じていた壁など本当は無かったのだ。あったのだとしたらそれは蓮が一方的に作っていただけで、蓮がキョーコの傍に行きたいと言えば、キョーコはいつでも招いてくれたのだ。

笑顔で手を伸ばすキョーコの手を蓮はしっかりと握りしめて、そのままグッと引っ張った。

「あわわっ!」

倒れこんでくるキョーコを優しく抱き留めた蓮は、そのままキョーコの唇を食む様なキスをする。
一瞬、ピクリと唇を震わせたキョーコも、蓮の優しいキスに応えるように掴まれていた手を蓮の指に絡めた。

「…一体どうしたんです?」
「なんだかキョーコとの距離が一気に狭まった気がする」
「急に抱き寄せて何言ってるんですか。この状況にどんな距離があるって言うんです」

クスクスと笑うキョーコを、蓮は堪らなく愛しいと思った。

「…距離をゼロにしていい?」
「だから今更何を言ってるんです。ほら、腰に腕を回さな… ~~っどこ触ってるんですかっ!距離をゼロって!!そんな事してたらクッキー作れなくなっちゃうでしょ!」
「やだ。今すぐしたい。俺の湧き上がる愛情を今すぐキョーコに伝えたい」
「駄目です!買い物だってしないといけない、クッキーを1回焼くのに20分は待つんですよ?それに袋詰めだってしないと。お夕飯までには終えたいじゃないですか」

このまま蓮に流されたら2、3時間は優に遅くなってしまう。気力・体力ともに消耗して、クッキー作りどころの話では無くなるのは目に見えている。
キョーコは絶対に駄目だと言い張り、それでもキョーコの太腿を撫で上げスカートの中へと消えようとする手をペシリと叩いた。

「待ち時間が20分でそれが3回か… 分かった。その時間を有効活用しよう。ね、キョーコ」

至近距離で神々しい笑顔を湛える蓮に、キョーコはげんなりと顔を顰めた。
20分で一体何が出来ると言うのか。ベッドでの出来事を思い返してみても、そんな時間で事が終わった例など無いではないか。

「何が出来るかはその時考えよう。よし、そうと決まったら早くキョーコの家に行こう!」
「それが目的じゃなくてクッキー作りが目的です!!」


**


「で、これがその愛しの彼女と初めての共同作業?で作ったクッキーだそうです。敦賀さんは切って並べただけで、あとは彼女が作ったから味は折り紙つきですって。そう説明して、取りに来た子たちに渡して欲しいって言われたんですよ」
「わぁ…。ご愁傷様って感じだね。…よし。俺がその子たちを慰めてあげよう」

そう言って席を立ちあがる貴島の背中に、吉野は冷たい視線を送った。

余ったら食べていいと言われている吉野は伝言を出来る限り忠実に再現して、蓮からのお返しを期待してやって来た女性たちに伝えている。

軽やかな足取りで蓮の席に訪れる女性達が、皆一様に表情を能面のように変えて手ぶらで帰って行く。

おかげで吉野の机の山は大きくなる一方だ。
説明を繰り返すうちに段々とエピソードが盛られてしまうのは、自分の逞しい想像力のせいではなく、普段から隣の席で彼女自慢を永遠と聞かされているせいだと思いたい。

彼女の話になると、途端に蓮の端正な顔が緩むのだ。その緩み方が非常に可愛らしい時もあれば、壮絶な色気を纏う時もある。
はっきり言って心臓に悪い事この上ない。セクハラだと訴えたいくらいだ。

そんな彼女バカな男に何とかバレンタインチョコを受け取ってもらおうと、蓮が席を外している隙に机に置いたり、義理チョコと思ってくれても構わない。受け取ってもらえるだけで十分なのだと目に涙を浮かべながらチョコを差し出す、あざとい雌豹たちの気持ちが吉野にはさっぱり理解できなかった。

きっと今頃、得意先では蓮が直接雌豹たちに引導を渡しているのだろう。
端正なマスクには不釣合いなほど爛々と瞳を輝かせて滔々と彼女自慢をされた日には、雌豹たちもしばらくは立ち直れないに違いない。


「あーあ。私も敦賀さんみたいに彼女バカな彼氏が欲しいなぁー」


吉野はそうつぶやくと、満面の笑顔で口いっぱいにクッキーを頬張った。



おしまい。




空白の20分×3回にどんな攻防があったかは、
書こうか封印しようか悩み中です。




Comment
面白かったです。
すいません、ちょっと時間がなくて・・・
また後日お伺いしますが、一言だけ先に!

封印反対!←
Re: 面白かったです。
まじーん様

お忙しい中、ご来訪ありがとうございます!しかもコメントまで!
封印反対に一票いただきましたー(笑)

おバカな敦賀さんは妄想が楽しいですが、ヒーロー色が皆無です。
そんな残念な2人のホワイトデー話、面白かったと言っていただけて良かったです!!

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