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   螺旋 10   


祝・北海道新幹線開通。遊びに行きたいです!!
残り1話だと思いますが、そこは計算できないナーの事なのでまだ何とも…。


翌日、天候にも恵まれて、キョーコたちのロケは順調に進んだ。

「京子ちゃん、もしかして素で楽しんでない?」
「はい!本当に楽しいです!あっ、オランウータンが綱渡りしてます!!」

行動展示で有名になった動物園のリポートは、沈んだキョーコの心を大いに浮上させてくれていた。

動物園に訪れたのは小学校の遠足以来、10年振りだ。
京都市内の動物園に行って大きなカバが歯磨きをされていた様子や、キリンがゆっくりと草を食む様子を見て興奮したことを今も覚えている。
それは動物好きのキョーコにとって、夢のような時間だった。

キョーコが預けられていたショータローの実家は旅館を経営している。
遠足で見た象やキリンの様子を、家に帰ったキョーコは仲居のおばさん達に目を輝かせて語った。
皆が良かったねとキョーコに言ってくれた。

でも、『じゃあ、今度連れて行ってあげようね』とは言ってくれなかった。

京都でも屈指の名旅館に、閑散期など訪れる事はない。常に予約でいっぱいなのだ。
大人たちが毎日忙しく働いているのを、幼いキョーコも十分分かっていた。本当は動物園に連れて行ってほしいと強請りたいのをぐっと我慢し、『動物園に行きたい』と言えなかった。

映像チェック中のスタッフの傍で、園内を行き交う親子連れをキョーコは複雑な表情で見つめていた。
風船を片手に、キャッキャとはしゃぐ子供の笑顔は、本当に楽しそうだ。

それを少し羨ましく思いながら、キョーコは物思いに耽った。

我儘を言っちゃいけない、我慢しなくちゃいけないって思ってきた事ばかりの道のりだった気がした。


自分が母に疎まれていると少なからず自覚してからは、忙しい母に甘える事を我慢した。

でも、母に褒められることは無かった。

預けられたショータローの家に居てもいいのだと言って欲しくて、遊びたいのを我慢して仲居仕事の手伝いを始めた。

けれど、結局はショータローについて逃げるように飛び出してしまった。

ショータローの取り巻きに嫌がらせをされても、それをショータローに言う事なく1人で耐えた。
本当は猛勉強の末に合格した京都の高校に進学したかったけれど、それを蹴ってショータローと一緒に東京に出た。
勉強が嫌だと愚痴るおしゃれな女子高生を横目に、キョーコはバイトに明け暮れた。

それなのに、ショータローはキョーコを選んではくれなかった。まるで使い捨てカイロのように、用が済んだとばかりにポイッと捨てられた。
もう、愚かな恋など一生しないと、1人で生きて行くのだと心にしっかりと刻んだ のに

やっぱり自分は母が言うとおり馬鹿なのだろう。もう二度と恋をしないと誓ったはずなのに、蓮を愛してしまった。

蓮への恋心が溢れそうになるのを抑え込んで、それでも蓮の傍に居る事を選んだ。
私だけを見て欲しいと叫びだしそうになるのを、歯を食いしばって我慢した。

でも、やっぱりその努力は報われなかった。

1段ずつ成長の階段を登っていたつもりだったのに、その階段は螺旋階段だ。
同じ過ちを繰り返すだけで、登る事に何の意味も無かった。

きっと蓮への恋心も昇華されることは無く、螺旋を描くようにぐるぐると巡るだけで答えなど決まっているのだ。

自分が蓮を想うのと同じように、私を愛してほしかった


キョーコはズキリと痛む胸に手をあてて、大きく深呼吸をした。

もう、いいんじゃないか。
想いを巡らせても同じ答えに行きついてしまうなら、その事を認めてしまおう。
蓮に愛されなかったことは悲しいし、当分の間はウジウジとあれこれ思い出して泣いてしまうだろう。

けれど

もし、その先に次があるのであれば、好きになった人に思いっきりその恋心を伝えよう。自分を見て欲しいと笑顔で言おう。
相手の目を見て、自分がしたい事を言える人を好きになろう。


「京子ちゃんお待たせ!OKです」
「はい。お疲れ様でした!!」

笑顔でスタッフたちに頭を下げたキョーコに、プロデューサーをはじめスタッフたちは惜しみない拍手を送った。

大丈夫。辛い思いを抱えたままも、仕事を投げ出さずに最後まで全うできたのだ。歩幅は小さくても、一歩前に進めた自分に誇りを持とう。
その誇りを胸に東京へ、帰ろう。

キョーコは澄み渡る青い空を見上げ、自分に言い聞かせるようにもう一度『大丈夫』と小さく呟いた。


**



キョーコを乗せた飛行機は、定刻通りに羽田空港に着いた。
ターミナルに降り立ったキョーコは、人の流れに乗って到着ロビーへと向かっていた。
荷物は全て手荷物だ。奏江に所帯臭いとある意味称賛される手腕で、蓮やだるまやの大将と女将さん、それに奏江と千織へのお土産も全て小さなキャリーケースに収めている。
手荷物受取所を素通りしたところで、千歳空港から札幌へと向かう車内で偶然再会した中学校の同級生に声をかけられた。

「あれ?最上さん!?」
「へ…あっ河野君!」

出会った時と同じく、大きなリュックを背負った河野は一瞬見せた驚きの表情を笑顔に変えてキョーコの傍へと歩み寄ってきた。

二度目の偶然に驚きつつも、2日前よりも緊張することなく会話が出来たのはきっと河野が見せた再会を喜ぶ笑顔のお陰だろう。
河野もキョーコと同じ便に乗っていたらしい。第2志望以下の大学のキャンパスを明日巡ってから京都へと帰るらしい。
第1志望校を見る事で俄然やる気が出たと言いつつも、2日間で廻った観光地や食べた海の幸を楽しそうに話す河野に釣られて、キョーコも撮影で訪れた市場で試食した蟹やウニの話で盛り上がった。

「そうだ、最上さんのメアドかLINE、教えてよ」

何かの縁だしと屈託なく笑う河野に、キョーコも笑顔で頷きバッグの中から携帯電話を取り出してパカリと開く。

「あ、電源落としたままだった」
「あぁ、飛行機だったもんね」
「 … うん …」

キョーコは曖昧に頷いた。
電源を切ったのは2日前なのだ。蓮の部屋を出て地下鉄に乗った時に電源を落とし、そのままバッグに入れっぱなしにしていた。

もしかしたら蓮からの連絡があるかもしれない。あって欲しい。
でも、そんな電話は無いかもしれない。いや、きっと無いだろう。
仮に電話があったとして、一体何を言えばいいのだろうか。『きょーこさんとお幸せに』などといえる筈も無かった。

そんな期待と不安、絶望を予想するのに疲れ果てて、キョーコは携帯の電源を落としたまま放置していた。

手元の携帯から河野をちらりと見上げれば、キョーコが電源を入れるのを笑顔で待っている。
その笑顔に苦笑し、躊躇いつつも電源ボタンを押そうとしたしたその時、差し出された手に携帯電話を奪われた。

「えっ?」

そのままパタリと閉じた携帯を羽織っていたジャケットのポケットへと仕舞い、キョーコのキャリーケースを掴むと、もう一方の腕をキョーコの腰に絡めて抱き寄せた。

急な出来事にキョーコは身を固くし、その腕の持ち主を仰ぎ見て更に固まった。


「…行くよ?」


キャップを目深に被り、伊達眼鏡にマスクで表情を覆った大男に、キョーコは攫われるようにその場を後にした。




続く




Comment
 あははははは!!!
待ち構えていたであろう蓮さん。

心臓をドクバクさせながら、会えたら最初に何を言おうとか色々考えていたでしょうに・・・馬の骨の存在にそれを全てうっちゃりましたね!(爆)

続きも楽しみにしてます。
すべて台無しです(笑)
まじーん様

コメントありがとうございます!
敦賀さん、空港でスタンバってたんでしょうねー。
栗毛のショートの子が見えるたびにビクリと体を揺らしていたに違いありません。
そんな存在がどこぞの馬の骨と楽しそうに出て来ちゃったらもう、頭真っ白になったでしょうね。
そのあたり、次に書ければ良いのですがー。
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