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   螺旋 11   


全然残り1話じゃなかったです(汗)
しかも更新頻度が落ちてすみません。色々とバタバタしてました。
今週も大わらわかもしれませんが、とりあえず螺旋、完結に向けてがんばりますー。


蓮は片手にキャリーケース、もう片手をキョーコの腰を抱いて、キョーコの歩調に合わせようとする配慮も無いままに混雑する空港を足早にすり抜けて行く。
その足取りは、キョーコの歩調に合せたいつものスマートなエスコートからはかけ離れている。蓮の逞しい腕に囚われたキョーコは、自然と蓮の歩調に合わせようと自然と小走りになる。
キョーコの腰をしっかりと掴む力強さに少しでも抵抗の意志を示そうものなら、きっと蓮はキョーコを小脇に抱えてしまうとさえ思えた。

カツカツと踏み鳴らす靴音に、キョーコは蓮の苛立ちを感じ取っていた。


でも、それより何より

「敦賀さん、どうしてこんな所に居るんですか。お仕事はどうしたんです!」

確か今日は雑誌の取材と撮影が夕方から入っていた筈だ。
それはもうすぐ始まる新ドラマの宣伝を兼ねた、女性誌の頭巻インタビュー記事。モデルの仕事の時のように何着も着替えて撮影をしなくてはいけないと、眉を下げて苦笑しながらキョーコに教えてくれた仕事だった。
まさかそれを抜け出してきてしまったのだろうか。そう思うだけでキョーコの顔色が真っ青に変わる。

「撮影は昨日の夜終わらせたよ。インタビューは今朝に替えてもらった。だから明日の昼までフリーだよ」
「どうして…」
「君を逃がさないように。どうせ俺とは会わないつもりだったんだろう?」
「そっ」

そんな事無い

反射的にそう言おうとした言葉をキョーコは飲みこんだ。

まだ自分の気持ちに折り合いを付けて行こうと決心しただけで、自分の感情を持て余している状態で蓮に会いたくはなかった。
何より、想い人との再会に浮かれているだろう蓮の姿など見たくなかった。
心の整理が出来て、正面から挨拶が出来るようになるまでは、蓮の事は避けようと決めていたのに。

蓮は言葉に詰まったキョーコから視線を前方に戻し、空港の駐車場へと足早に進み、停めてあった蓮の車の助手席にキョーコを乗せ、自分も運転席へと乗り込むと、変装の為に身に着けていたキャップやマスクを外した。
それらを乱暴にまとめて後部座席へと放る様子に、普段は見せない蓮の苛立ちが窺えた。

キョーコには蓮が何に怒っているのか全く分からなかった。それに蓮は自分をどこに連れて行こうとしているのだろうか。
蓮の想い人が蓮の元へと還って来た今、キョーコの帰るべき場所は蓮のマンションでは無いはずだ。
キョーコは意を決して蓮に話しかけた。

「敦賀さん?」
「…… 運転に集中したいから黙ってて」

前を見据えてハンドルを握ったまま、突き放すような態度の蓮にキョーコは何も言えずに俯き、スカートのすそをギュッと握り締めた。
一体何だと言うのだろうか。蓮の怒りを買うようなことをしてしまったのだろうか。

蓮に冷たくあしらわれた事がキョーコの心を更に萎縮させ、苛立ちを隠さずにただ前方だけを見る蓮に、キョーコの目頭はジワリと熱くなる。


「…ごめん」


ぽそりと呟いた蓮の一言をキョーコは拾い、恐る恐るゆっくりと顔を上げた。

一体今のは何に対する謝罪なのだろう。
キョーコを無理やり車に乗せた事?黙っていろと言った事?それとも曖昧な関係にキョーコからピリオドを打たせた事?

物問いたげにじっと自分を見つめるキョーコに、蓮はそれ以上何も言わなかった。


2人とも終始無言のまま車は走り続け、陽が落ちる頃ようやく蓮のマンションの駐車場へと滑り込んだ。
蓮は車を停めてトランクに詰めていたキャリーケースを取出した後、車から降りてこないキョーコを不審に思いながら助手席のドアを開けた。

「どうしたの?」
「…だって…」

車を降りれば蓮の部屋に行くことになるのだろう。
そこは昨日、一昨日と蓮が『きょーこちゃん』と過ごしたかもしれない空間なのだ。

キョーコがロケへと旅立つ前に自分の痕跡を綺麗に消したその場所に、知らない女性の痕跡を見つけてしまったら、自分は一体どうなってしまうのだろう。
そう思うだけで手が震えてシートベルトを外す事も出来なかった。きっと震えるこの脚では一歩も歩けないだろう。
そんな情けない自分の姿に、キョーコは涙を我慢し震える唇をギュッと噛みしめた。

「そんなに俺が怖い?」

何のことだろうかと思った瞬間、キョーコの体がふわりと浮いた。
いつの間にかキョーコのシートベルトを外した蓮が、キョーコの体を抱き上げたのだ。
密着した蓮から香る嗅ぎ慣れた匂いに、キョーコの胸はギリギリと締め付けられる。

「はっ放してください」
「駄目。逃がさないって言ったよね。それに今降ろしても歩けないでしょ?」

確かに今この手を放されたら、キョーコは地面に座り込む羽目になるだろう。
それでも、冷たい言葉とは裏腹にキョーコをまるで宝物のように優しく抱く腕の中から、胸を締め付ける蓮の香りから逃れたかった。

もう、この場所は自分が居ていい場所ではないのだから。

そんなキョーコの気持ちを無視したまま蓮は歩き出し自分の部屋の階へと繋がる専用エレベーターへと乗り込むと、静かな怒りを孕んだ声音でキョーコの頭上から語りかけた。

「…空港で親しそうに話していた男は誰?」
「え?」
「メアド交換しようとしてたよね。その男の事が気になる?」
「ちっ違います。河野君は中学の同級生で、偶然会っただけです」
「そう。でも随分と親しそうだったよね」

刺々しい蓮の言葉にキョーコはカチンと来た。

違う。そんなんじゃない。

河野とは本当に偶然出会っただけなのに。どうして自分が蓮にやましい所を目撃されたかのように追及を受けなければならないのか。
やましい所があるのは蓮の方じゃないか。それもキョーコの存在が蓮にとってやましい気持ちを抱える根源じゃないか。

それを十分に分かっているから!!

蓮の幸せを邪魔しないよう、問いかけたかった言葉を、伝えたかった想いも全て飲みこんで何も伝えずに消えようとしていたと言うのに、感謝されこそすれ、非難される覚えはない。
それなのにどうして放っておいてくれないのか。もうこれ以上惨めな気持ちにさせないで欲しいのに。

キョーコは顔を上げて懸命に蓮を睨みつけた。引き結んだ唇が震えるのを我慢できなかった。

怒り、悲しみ、嫉妬

全ての負の感情がうねる波のように押し寄せて、それをどうにか押し止めようとしていたキョーコを一気に薙ぎ倒した。

「降ろしてくださいっ!」
「嫌だ。逃がさないって何度言えば分るの」
「いい加減にしてください!人の気持ちを何だと思ってるんです!!」
「…俺の気持ちを無視する君に言われたくない」

言い争いは平行線のままエレベーターは最上階へと到着し、扉が開いた。腕の中で暴れるキョーコを抱きしめたまま蓮は部屋へと入り、そのまま寝室に辿りつくとキョーコの体をベッドへと放り投げた。

「ひゃっ」

華奢な体が大きく弾んだ。

スプリングで痛くは無いが、いつもと違う乱暴な扱いにキョーコは驚いた。
一瞬遅れて身を起こそうとすると、すぐに強い力で両肩を掴まれてベッドへと押し倒される。

「やっ」

掴まれた肩に指がギリギリと食い込む。
何をするのか。怒りと興奮でキョーコが声を上げようとした瞬間、蓮の顔が間近にあった。

「許さないよ」

一体何をと眉を寄せたキョーコの表情が、弾かれたように驚愕の色に染まった。

「どうして」

震えて掠れる声で蓮に問いかける。

「どんなに最上さんが俺を嫌っても、俺から離れるなんて許さない」

キョーコの目が、蓮の表情に釘づけになった。

「…… どうして?」

「理由なんて必要?そんなものが無いと駄目だって言うの?」


違う そうじゃなくて


「どうして、泣いてるんですか?」


ポタポタと零れてくる温かい雫がキョーコの頬を濡らしていた。


聞きたい事は山ほどある。でもそれ以上に蓮に言いたい事も、ぶちまけてやりたい気持ちも沸々と湧き上がっていた筈なのに。
それなのに、蓮の涙の前に全てが霧散してしまった。

辛そうに、まるで痛みを耐える様に眉を寄せて。

それでもキョーコから視線を反らさずに。


「置いていかないで」


痛いばかりだった掴まれた肩から、蓮の震えが、魂の慟哭がキョーコに伝わった。



続く



Comment
まさに。
泣き落とし!

でも、これだけじゃ今すぐ去るのを止まってはくれても、もともとの誤解は解けないままですよね。

泣きべそ蓮くんは、ちゃんとキョコさんに自分の気持ちを告げられるのでしょうか。

頑張れ、蓮くん!!
Re: まさに。
まじーん様

コメントありがとうございますー!
泣き落とし(笑)情けなさMAXですよね。
男の人が縋る図って『ないわー』と思いますが、キョーコちゃんがいなくなると思えば、敦賀さんくれ位やってのけるかなと。
根性(?)見せて欲しいところですが、どうなることやらー。
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