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   あなたの隣に 2   


どうにかアップ出来ました。
今の所こんな調子ですが、シリアス展開の予定です。


何なのよ何なのよあの男!人を見た目だけで判断して。
そりゃあ私だってこの作業着はどうかと思うわよ!うわっって思うわよ!!
でもだからって私が何も言わないうちに芸人だって、しかも不法侵入者だなんて勝手に思い込んで放り出すなんて!!

ほんとにむーかーつーくーっ!!

この怒りを一体どこにぶつければいいのかしら!?

「やだ、エレベーターの前でうずくまってるの、さっきのお掃除の子じゃない?」


ピクリ。


「わっ本当だ。虫みたいに這いつくばっちゃって何してるのかしら。それにしてもあの色、本当に目の毒。」
「あんな色の毒虫なんてすぐに退治されちゃうよ」
「シューッっと一吹き!」

首をぐるりと巡らせた先で笑い合うのは、最上階のフロア掃除向かう前に出会った少女たちだった。
…さっきと変わらず人を指差して小馬鹿にしている態度!今すぐ教育的指導をして差し上げたい!!
怒りの矛先をお嬢さん方に向けていいかしら?

「ちょっとお嬢さ「あらーっキョーコちゃん。そんなところで膝ついて何やってるんだい」」
「…麻里子さん」

廊下の先からキョーコの同僚の麻里子が、ゴミでも落ちていたのかと言いながら声をかけてきた。

怒りの矛先は、飄々と現れた麻里子に取り上げられてしまった。

「最上階の掃除は終わったのかい。あのフロア、大変だったろう?私が前に行った時なんて、花びらが絨毯の上にこれでもかってぶちまけられててさ。一体どこの王族がお通りになったんだって驚いたよ」
「はぁ」

流石にそれは驚くし、掃除も面倒だった事だろう。今日のフロアがそんな状態でなくて良かったと思う反面、花びらの絨毯を私も見てみたかった。あわよくば掃除ついでに歩いてみたかったと、色とりどりの薔薇の花びらが敷き詰められた赤い絨毯を想像しながら、キョーコはようやく座りこんでいた床から立ち上がった。

「すみません。その…最上階のお掃除は粗方終わったんですけど、追い出されて道具を置いてきちゃいました」

このユニフォームのお陰で不法侵入者と間違えられたと眉を情けなさそうに下げながら、担当外のフロアで座りこんでいた理由をかいつまんで説明しているうちに、先程の有名俳優の手酷い扱いを思い出して沸々と怒りが込み上げてきた。

「あぁ。この作業着のせいだね。私も今日何度ギョッという目で見られたか」

社長に文句を言ってやろうと豪快に笑う麻里子の様子に、キョーコの怒りも幾分浄化された。

「最上階の清掃はいつも頼子さんが専任だから、初めて見たキョーコちゃんを不審者だと思ったんだろうね。ごめんね。一緒に掃除に行ってあげられればよかったねぇ」

そうしたらキョーコを追いだした輩を逆にモップで叩いて追い出してやったのに、と麻里子は残念そうに呟いた。

「いえいえ。麻里子さんだって忙しいんですから、仕方が無いですよ…仕方ないついでに掃除用具を取りに行ってきます」
「いいよいいよ。私が取りに行ってあげる。キョーコちゃん、そろそろ次のバイトの時間だろ?」
「え? あっもうこんな時間!!」

振り仰いで見た柱時計の時刻は、いつもならば既に着替えを終えて、次のバイト先へと自転車に乗っている時間だった。
憩室で差し入れのお茶請けと一緒にお茶をほっと一息つきながら飲む時間も無いではないか。それより何より頼子の様子を見に行けなかったではないか。

「すみませんがお願いしていいですか!?あんにゃろーーっ!敦賀蓮めーっ!!」
「敦賀蓮がどうしたんだい?本当にあの俳優さん、カッコいいよねぇ。まさか最上階で会ったのかい?」
「会ったと言うか、放り出されました!」

見事な放物線を描いて!

「あらーっ私も放り出してほしい!今道具を取りに行ったら私も捕まえてもらえるかしら」

どうせなら後ろからガバッと抱きかかえるように捕まえて欲しいと身をくねらせる麻里子に頭を下げて、キョーコは更衣室へと走った。


**


エントランスで通話中の社が、エレベーターを降りた蓮に片手をあげた。
仕事の電話だったらしく、スケジュールの確認をするとすぐに通話を終えると胸ポケットへとスマホを仕舞った。

「すみません。お待たせしました」
「いや、大丈夫だよ。それに社長もまだ前の会議が終わってないらしい」
「そうですか」

その為、この後に控えている雑誌の取材時間を調整していたのだと社は苦笑した。

そんなやり取りをしていると、再びエレベーターのドアが開いた。


「あれま。本当に敦賀さんに会えたよ!」
「麻里子さん、俺もいますよ」
「ごめんごめん、社さんも十分いい男だよ」

着いた早々、大物芸能人に会えるなんてやっぱり最上階は違うなどと言いながら、麻里子は社の背中をバシバシと叩きながら豪快に笑う。

「まっ麻里子さん本気で痛いですよっ」
「何言ってるんだい。大袈裟だね」
「普通に痛いってば!ってそれより麻里子さんまで何て色のつなぎを着てるんですか。まさか麻里子さんも芸人を目指して!?」
「あぁこれかい。どうだい敦賀さん、似合ってるかね?」
「あはは」

蓮が笑って流した!!
確かにドピンクのつなぎが似合うなんて、お世辞にもならないよな。それに大抵の人は着こなせないと思います!

社の心の声は麻里子には届かない。

「今日からこれ着ろって渡されたんだよ。私らの制服さ」
「は?」
「ここの社長、なかなかセンス良いよねえ。ちょっと派手だけどさ。全く、今日はこのセンスが分からない若造たちに後ろ指を指されっぱなしだよ。でも社長のデザインに文句があるのかいって言ってやれば、顔を青くしたり赤くしたり。面白かったよ」

コロコロと笑う麻里子を蓮と社は唖然と見つめた。
以前、目の前を歩いていた麻里子が重そうに運んでいたバケツを降ろして、腰をトントンと叩いていたのを見かねた蓮が、麻里子の代わりに運んだのが縁で、それ以来、3人は親しく声をかける仲だった。
そんな麻里子が、つい先ほど蓮が放り出した少女と同じ目に突き刺さる色の作業着を着て、これが制服だと言うのだ。

「可哀想に、そんな若造に芸人に間違えられて追い出された子に変わって掃除用具の回収に来たのさ」

ちらりと蓮を見る麻里子の目に、ほんの少し怒りが含まれていた。

「じゃあ、さっき蓮が追い出した子は芸人じゃなくて、仕事中の清掃員だったのか!」

しかも襟首を掴んで、最後は放り投げるような真似までしたのだ。

「俺、謝ってきます」
「もう帰ったよ」
「え?」

瞬間、踵を返してエレベーターのボタンを押そうとした蓮に、麻里子はもう遅いのだと告げた。

「だから私が代わりに掃除用具を取りに来たんじゃないか。あの子はいつも3時で上がりなのさ。一生懸命、それこそ時間を忘れて掃除をしていたというのに放り出すなんて、まったく酷い男だよ。やだやだ。売れっ子芸能人様は人の話を聞く時間も無いようだね。それをいい大人が止める事も出来ないなんてね」

麻里子の抗議の声を、社も反省しながら聞いていた。
例え一般人で無かったとしても、フェミニストな蓮が女の子の襟首を掴むという暴挙に驚いて、唖然としたまま見過ごしてしまったのだ。








「甘喜廊の鯛焼き」

沈黙の中、麻里子が呪文のような一言を唱えると、まるで彫像のように固まっていた蓮と社が動き出した。

「麻里子さん?」
「粒あんもしくは抹茶クリームあん。トッピングはホイップカスタード」
「…え?」
「敦賀さんが投げ飛ばしたキョーコちゃんの好物だよ」
「麻里子さん…」

キョーコの好物を手土産にして、きちんと謝れと言ってくれているのだ。
その一言に、蓮はほっと息をつき、社はスマホを取り出し急いで甘喜廊のサイトを検索し始めた。

「まぁ、その気になればいつでも会えるよ。キョーコちゃんは毎日シフト入れてるからね」
「毎日ですか?」
「そ。朝7時から3時までなら大概居るよ」
「ありがとうございます」

手酷い仕打ちに、今頃きっとあの子は怒っているだろう。
鯛焼きくらいで許してもらえるだろうか。受け取ってもらえるだろうか。

「キョーコちゃんは良い子だからね。敦賀さんがきちんと誠意をもって謝れば、ちゃんと許してくれるさ」

蓮の心配を見透かしたように笑う麻里子の言葉に、蓮は頷くしかなかった。



続く。



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