HOME   »  スポンサー広告  »  スポンサーサイト   »  短編  »  真夏の世の夢

   スポンサーサイト   


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

   真夏の世の夢   


小話が浮かんでしまったので、こちらをアップです。
ぽんと浮かんだ妄想ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。



「への29番。起きてください。への29番!」
「んー…あと5分……」
「モーッ とっとと起きなさい最上キョーコ!!」
「耳元で大声出さないでよぉ」

重い瞼をどうにかこじ開けると、すぐ目の前に苛立たしそうに眉間に皺を寄せて牙いても尚クールビューティな友の顔があった。

「あふぅ。モー子さんおはよう」
「おはようじゃないわよ!寝ぼけてないでさっさと行列に並んで頂戴」

起き抜けのまだよく廻っていない頭を傾げながら奏江が指を差す方に視線を巡らせると、大勢の老若男女が無言のまま一列に並んでゾロゾロと歩いていて、その誰も彼もが一様に顔色が悪い。
一体どこに向かっているのだろうか。行列を辿った視線の先には、天空に向かって巨大な門がそびえ立っており、行列は吸い込まれている。
どうやらみんな、あの巨大な門を目指しているようだ。
何のテーマパークだろうか。いや、テーマパークを目指している割には、並んでいる人達の顔色が悪すぎる。もしかすると名医が居ると評判の病院かも知れない。

「モー子さん、あの朱色に塗られた門は何?」
「地獄の門よ」
「へ?」

思っても見なかった返しに、キョーコは奏江をポカンと見つめた。

「地獄にようこそ。ま、最後の審判をこれから閻魔大王様から受けてもらった後、正式にお迎えだけどね」

まぁこの行列に並ばされた時点でほぼ確定だけど、とサラリと宣言した。

「うえぇっ!私死んじゃったの!?」
「そう。死んじゃったの。理解が早くて助かるわ。ほら、馬鹿面を晒していないでさっさと28番の後ろに付いて。あ!そこ横入りしない!!」

まるで交通取り締まりをする婦人警察官のように、笛をピッピ鳴らしながら行列を整理しに走って行ってしまった。

「モー子さん、カッコいい」

親友の働く姿に見惚れていたキョーコは、はっと自分の置かれた状況を思い出して頭を振った。

覚えは無いが、いつのまにか自分は死んでしまったらしい。交通事故だろうか、それとも病気か。
全く自分が死んだ気はしていないが、行列に並んでる人たちと同じ真っ白い着物を自分も着ている。そしてご丁寧に額には三角の布までつけている。
おまけに自分に付けられた整理番号はへの29番号。何となく間抜けな番号に聞こえる。

本当に死んでしまったようだ。しかも天国ではなく地獄コース。
ドラマの撮影も順調に進んでいた筈で、色々とやり残したことがあると言うのに。
全力でノーと叫びたいが訴えるべき相手も見つからず、途方にくれたキョーコは仕方なく行列に並んだ。

最後の審判とやらまで随分と時間がかかりそうだなぁなどと思っている間に、自分の番がやって来たようだ。
門の手前にいた奏江を見つけてキョーコは駆け寄った。

「モー子さん…じゃあ私行くね」
「はいはい。後がつっかえてるんだから、さっさと入んなさい」
「そんなに急かさなくてもいいじゃない。最後のお別れなんでしょう?モー子さん元気でね?」

今生のお別れを惜しもうと、涙を浮かべながら奏江に伸ばした手は無情にもぺしりと叩かれた。

「うー。モーコさんが冷たいー」
「煩いわね。あんたはまだかって閻魔様がお待ちかねなの。早く入んなさいよ」
「うえぇぇっ!?どうして名指し何よぉ」

手ぐすねを引いて待っている閻魔大王になど会いたくない。
朱い顔に髭を蓄えて、ギョロリと大きな目を剥いた厳しい顔つきの大きな体躯の閻魔大王が、片頬を吊り上げて嗤いながら手招きしている様子を想像してキョーコは震えあがった。

ジリジリと後ずさろうとするキョーコの腕を、奏江は逃さないとばかりに力強く握り、次の瞬間

「いいからさっさと逝けーーー!!」

ドンと背中を強く押されたキョーコは前のめりになって閻魔大王が待つと言う部屋の扉に、頭から突っ込んでいった。

転ぶ、と目をギュッと瞑ったキョーコに、床に叩きつけられる衝撃はやってこなかった。
衝撃は自分を包み込む温かいぬくもりが吸収してくれたようだ。

「大丈夫?」
「はい。助かりました…って!?」
「て?」

ほう、と一息ついたキョーコの頭上から、聞き慣れた声が降ってきた。
それに今自分を包み込んでいる香りは、どんな時でも心を落ち着かせ、そして癒してくれるもの。 たとえここが地獄でも。
顔を上げたキョーコは聞かずにはいられなかった。

「つつつ敦賀さん!?どうしてこんな所にいるんです!?」
「俺は閻魔大王だよ?」

閻魔なのだから、地獄にいるのは当然だよねと笑うその姿は、他人の空似だとは到底思えないくらい蓮そっくりだ。
声も顔も躰のバランスから骨格、筋肉のつき方からしなり具合まで、キョーコが記憶しているものと寸分たがわないのだ。神の寵愛を一身に受けたその存在と同一のものが、地獄の一丁目手前に燻っていていい筈が無い。

早く地上もしくは天上に帰るべきだと言うキョーコの主張を受け流して、蓮と同じ姿を持った閻魔大王はキョーコの手を取ると机の前に誘った。
机の上には、鈍く光る真鍮製の天秤が1つ置かれていた。蔦が巻き付く繊細な装飾が施された天秤に、キョーコの乙女心は釘づけになった。
ほぅと漏らしたため息に、蓮と同じ顔の閻魔大王が目を細めてくすりと笑った。

「への29番だね。それじゃあ、生前の善行と悪行をこの計りに乗せるからよく見ていてね」

そう言うと、キョーコに両手をかざした後、天秤の両皿に片手ずつ触れた。
ゆらゆらと揺れる天秤の黒い皿が悪行、白い皿が善行だと分かりやすく丁寧に説明をしてくれる様子も、蓮そっくりだ。

カタンと天秤が一方に傾いた音に、蓮をじっと見つめていたキョーコは慌てて視線を戻した。

「うん。やっぱり善行の方が断然多いね。  でもごめんね。そんな事はどうでも良いんだ」
「いえいえ。どうでも良い訳ないです。寧ろ重要じゃないですか。善行の方が多いなら私、是非とも天国に行きたいです」

そうだ。どうせ死んでしまったのなら天使に会いたい。
ふくふくほっぺにプリンとしたおしりの金色フワフワ巻き毛のかわいい天使を愛でたい。パタパタと小さな羽を懸命に動かす天使と戯れたい。

「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか」
「へ?」

ウフフアハハと天に昇って行く妄想を脳内で繰り広げていたキョーコは、地獄の番人に足を掴まれて妄想世界から引き戻された。

「への29番…いや最上さん。本来なら天国の門をくぐっているはずの君が何故ここに来たか分かる?」
「全く分かりません!」
「いや、あるはずだよ。思い出してご覧」

18年間の慎ましくも短い人生の間に、一発で地獄コースになってしまうような、あんな事やこんな事があったでしょうか。
ウーンと腕組みをして考え込むキョーコに、地獄の番人はダメ息をつくと、キョーコにその罪状をつまびらかにしようと語り始めた。

「君は生きている間に固く誓ったことがあるよね?」
「ん?」
「永遠に思い人の幸せは祈ってあげられないんだよね?」
「え!?」
「その想いは地獄まで持って行くと誓ったよね」

確かに誓った。
自分の蓮への気持ちを真正面から見つめて受け入れ、不細工に泣き腫らしながら、不細工な蓮への気持ちを飲みこんだ。
これこそが自分が地獄に堕ちた罪だったのだとキョーコは理解した。

「そう。誓ったよね?」
「……はい」
「地獄にようこそ」

んん?なぜここで神々しい蕩けんばかりの笑顔?

キョーコは閻魔大王の笑顔の理由が分からず小首を傾げた。

「さあ、地獄にまで持って来たモノを言ってご覧」
「!」
「包み隠さず、ね」

「ななななっなんですかその黒い微笑みは。私が抱えてきたモノなんて全てお見通しだって顔をして!」
「勿論分かっているよ。それでも本人の口から聞きたいんだよ。大丈夫。時間は腐るほどたっぷりあるんだ。ソファーにでも座ってゆっくりじっくり話をしようじゃないか」

そう言って、全面ガラス張りの窓の方を指差した。

「ほらご覧。テラス席からは血の池地獄の様子が一望できるんだ。ここでたっぷり聞いてあげるよ」
「ひいぃぃっ。嫌です結構です。そんな阿鼻叫喚図なんて見たくありません!!」
「じゃあ、言ってみようか。俺の事を最上さんはどう思ってるの?ここ(地獄)にまで隠し持って来たモノを、さあ見せて」
「なななっ何を言ってるんですか。しかも俺って。やっぱり閻魔様は敦賀さんだったんですね!!」
「まあそんな細かい事は気にしないで」
「気にしますっ!そっそれに私、何も隠してなんておりませんにょっ?!」
「そうなの?」
「ほうれふよっ」

蓮に親指と人差し指で器用に両頬を摘まれたキョーコはうまく喋れない。
指を離せと抗議しようと顔を上ると、蓮がもう一方の手に持った大きな鋏のようなものが目に入った。

「嘘つきさんの舌は抜いてしまおうね。知ってる?閻魔大王は嘘をつく罪人の舌を、このやっとこで抜くんだよ」
「ひょーっ!?」
「それとも道具なんか使わずに噛み切って欲しい?」
「にょっちも嫌れふっ!」
「大丈夫。優しく食んであげるから」

閻魔大王が夜の帝王に進化(退化?)した!

いつの間にか壮絶な色気を纏った蓮の視線に耐えかねて、キョーコはギュッと目を瞑った。

「ラストチャンスをあげる。さぁ、自分の意志で俺に言ってごらん?」
「ふぇぇっ」
「誰にも伝えることなく地獄にまで持って来た、君が抱えるその宝石箱の中に詰まった言葉を、俺に聞かせて?」


つ、と優しく目尻に滲んだ涙を指先で優しく拭われる感覚に、もうここまでだとキョーコは覚悟を決めた。


そろそろと目を開けて、じっと自分を見下ろす閻魔大王を見つめた。


「ん?」
「敦賀さんが好きです」
「…え?」
「私じゃない誰かと紡ぐ敦賀さんの幸せを願えない私は、とんでもない重罪人です」
「…」

だから一発地獄コースを辿ったのだろうと、キョーコは目の前の番人に自分の罪を告白した。

「閻魔様、もう隠し事はありません」

だから舌は抜かないで欲しい…  あれ?閻魔様の服装が違う。
さっきまで社長さんがよく着ている中華皇帝みたいなお衣装だったのに。いつの間に世俗の衣にお召し替えされたのかしら。
もしかして閻魔様は魔法使い!?

「閻魔でも魔法使いでもないよ」
「え?」
「俺はたった今君が告げてくれた言葉に、歓喜に震えてるだけのただの男だよ」
「へ?」

辺りを見渡せば、そこは閻魔の執務室ではなく、見慣れた蓮の家のリビングだった。
その上今自分は蓮の膝を枕にソファーに横たわっているではないか。

コレはどういう事だろう?
蓮に問いかけようと視線を戻せば、顔を両手で覆って天を見上げている。
表情は窺えないが、髪の隙間から見える耳は真っ赤に染まっている。

どうしたのだろう。そう言えば、食後に蓮とDVDを見始めた記憶があるような無いような…などと考え込んだキョーコをふわりと嗅ぎ慣れたグリーンノートの爽やかな香りが優しく包み込んだ。

「たとえ寝起きで寝ぼけていようとも、それが最上さんの偽らざる本心だって言うなら、神にさえ背くと誓った君への想いを俺も君に曝すよ」
「敦賀さん?」



「あのね…。俺も最上さんの事を 」






2人で手を繋いで行くのなら、地獄だって案外住み良い場所なのかもしれない。




おしまい。




Comment
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

menu    Profile    menu

ナー

Author : ナー

menu    Recent    menu

menu    Counter    menu


キリ番踏まれた方、コメントなどでご連絡ください。
リクエストなぞあれば浮かれてお聞きしちゃいます。

    Since 2014.12.07     

menu    Category    menu

menu    禁無断転載    menu

menu     Link     menu

menu    ブロとも    menu



形而上 愛の唄
美海様が作ってくれた拙宅バナー



menu   WonderfulWorld   menu
Mimi's Worlds  by 美海様 mimi's worlds /STAR星DREAM夢の卵 HEARTハートLOVE愛の卵 From Mr.D * Dear my dare Dears. Love Dreams Eggs ©From far away beyond beautiful sea.

Hop Step Skip Jump !!
  by ゆみーのん様 Hop Step Skip Jump !!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。