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   願うこと   


引っ越し作業が佳境です。
限定記事に頂いていたコメントが引っ越し先に持ってこれないんですけど、
そういうもん?かなり悲しい。。。



カシャンっ


キッチンから何かが割れる儚い音が聞こえ、蓮は少し驚いて、リビングからキッチンに向かった。

いつもであれば蓮とキョーコ、2人並んで食事の片づけをするのに、蓮はリビングのソファに座って
台本を頭に叩き込んでいた。


食事の最中に、明日の撮影分の台本に修正が急に入って、まだ覚えきれていないと笑い話のつもりで
蓮はキョーコに話した。


「片付けは1人でやりますから。敦賀さんはセリフを覚えてください」


彼女が食器を洗い、それを受け取って俺が拭く

キョーコと並んで他愛ない話をしながらの後片付けはとても魅力的な時間なのに。

その時間を奪われた事を恨めしく思いつつも、修正によってより良い作品となっていた台本に
『仕方がないか』と蓮は語りかけて、それに集中していた。


「キョーコ、怪我しなかった?」
「すみません!グラス割っちゃいました!!ごめんなさい」
「いや、グラスはどうでもいいから。怪我してない?」
「怪我はしてません…でも、どうしよう…」

どうしたの?そんな世界が破滅しそうなほど悲壮感漂わせて…

「弁償します…お高そうなグラスでいらっしゃいましたね…」


君の心配はそこかっ!


「自分の彼女から弁償してもらおうなんて思わないよ!」

まったく…こんなこと1つも頼ってもらえないのか。

「あっ、私が片付けますから、お仕事に戻ってください…すみません、集中させてあげられなくて…」

蓮を気遣ってシュンとするキョーコを抱きしめたい衝動に駆られる。

「危ないから、俺が片付けるよ」
「でも…」
「うん。これ位やらせて?」
「すみません、お願いします」


グラスのかけらを拾いながら、蓮はキョーコに尋ねた。

「それにしても珍しいね、キョーコが洗い物を落とすなんて」
「……手が滑りました」
「何か考え事でもしてたの?」

キョーコからの返事が無くて、蓮がキョーコの顔を下から見上げた瞬間、


皿が落下してきた。


「わっ!」

咄嗟に手を出して、何とか落下を阻止した。

「あれ? …きゃーっ!私ったら何てことを!!一度ならず二度までも!!」
「うん。今回はセーフだけど、一体どうしたの?体調でも悪いの?」
「いえ、体調はすこぶる良好です。本当にごめんなさい… その、考え事をしていまして…」
「何を考えてたの?」
「たいしたことじゃないんです…」


…絶対に何かある顔してるじゃないか…


蓮は立ち上がり、キョーコの手を取ってリビングに移動し、キョーコをソファに座らせて、自分はラグの上に座った。
蓮はキョーコを見つめて話を促した。

ためらいつつ、キョーコは話し始めた。

「ほんと、どうしようもない事を考えてたんです…」
「俺には何でも話して。それともキョーコの言うどうしようもないことを話せないほど、俺はキョーコにとって
取るに足らない男なの?」
「そっそんなことあるわけ無いじゃないですか!」
「じゃあ、話してよ」


うーっ。なんか卑屈になってるようで、本当は話すの嫌なのに…


「…そのですね、テーブルを片付けているときに、修正された台本を一読する敦賀さんをちらっと見たんですね?
そうしたら、すごい楽しそうな顔になって…。あぁ、良い修正がその台本に入ったんだなーって思ったんです」
「うん。確かにすごく良くなってた」
「きっと、脚本家さんが敦賀さんの演技を現場で見て、イメージが膨らんだり、もっとこうした方がいい筈って
思った結果、急きょ修正されたわけでしょう?」
「うーん、どうだろうね…」
「いえ、絶対にそうです」

絶対の自信を持って語るキョーコを、蓮は少し困った顔で見つめていた。

そのキョーコの顔が曇る。


「…自分が演じてるところを見た脚本家さんに、私も同じことを求められる日が来てくれるのかなぁと思いまして…
や、敦賀さんと自分を比較するなんておこがましい事極まりないのですけどっ!
うー。自分が恥ずかしい…」


ふーっっとため息をついて蓮は語りだした。


「呆れた。何を言ってるの?」
「はい。夢見てすみませんでした」

消え入りそうな声でキョーコは答えた。

「既になってるじゃないか」
「えぇ?」

キョーコは心底驚いたとばかりに大きな目をさらに見開いた。

「だって、『Dark Moon』の『未緒』なんて、用意されていたものを根底から覆したじゃないか。
『BOX "R"』のナツは、『未緒』をリクエストされた癖に、カリスマ女子高生に作り替えちゃったのにね?」
「あ…でも…」

蓮はくすくす笑い出す。

「撮影も進んでたのに、君の出演シーンは全部撮り直したわけだろ?監督の決断に現場は慌てたと思うよ?
君は脚本家や監督の想像の上を行く役を作り上げられるんだから…ね?」
「…なんか、胸のあたりがもぞもぞします…ありがとうございます」
「どういたしまして」
「焦らず、自分のできることを精いっぱい頑張ります」
「うん」


良かった…。キョーコに笑顔が戻ってきた。

自然と蓮も笑顔になる。


彼女の不安を取り除くのも、一番近くにいる俺の役目でありたい。
彼女がいつでも笑っていられるよう、全力で守りたい。


「それでぼーっとして洗い物を落としまくってたの?」
「あれは単なる癖です」


不安がなくなって、饒舌にキョーコは話し始めた。

「いつも、洗い終わった食器を、ひょいっと敦賀さんが受け取って拭いてくれるじゃないですか?
考え事をしていたから、それ以外がおざなりになっちゃって、いつもと同じ動きでグラスを
手放しちゃったんです。習慣て怖いですね」

キョーコは苦笑交じりに笑っている。


習慣…か。


「…それじゃあ、これ以上皿が割れないよう、いつも通り一緒に片付けをしよう」
「えっでも台本…」
「大丈夫。大体覚えたから」
「…じゃあ、お願いします」


いつでも君の隣に立っていたい。

些細なコトでも、仕事に悩んだ時も、そして


この先の人生においても


当たり前のように、自然に、お互いが寄り添った存在でありたい。


それを、心から願う。





Fin.




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