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   手のひらの上 前編   


「おはよう、蓮」
「おはようございます。社さん」

朝から雑用を済ませた社を、蓮は事務所の駐車場でピックアップした。
いつもは鞄1つの社が、紙袋を後部座席に大事そうに置いた。

「社さん、今日は何だか大荷物ですね?」
「むふふふ。蓮君、気が付いちゃった?気づいちゃったかー?」

このニマニマ顔。どうやら最上さんに関することのようだ。
俺で遊ぶ気満々らしい社さんの頬をねじ上げたくなったが、そんな反応をしてはどんなしっぺ返しがこの有能マネージャーから返ってくるかわからない。
かと言っておとなしく遊ばれるのも癪なので無関心を装っておこう。

「気づかない方がおかしいでしょう。そんな恭しい扱いをしていたら」
「っだよねーーーー!んふふー。実はさ、これ、お弁当なんだよねぇ~~」
「最上さん、事務所にいたんですか?」
「あれ?誰が作ったお弁当かなんて俺まだ言ってないよねぇ。蓮君?」

失敗した、と思ってももう遅い。

「キョーコちゃんの手料理おいしいもんなー。恋のスパイスも入っちゃったらもう、たまらないよねぇ~~
手料理だけじゃなくてキョーコちゃんごと食べちゃいたい!って感じ?もー朝から蓮君のえっちー!」


イラッ


「!~~~~~いひゃいっ!いひゃいよ!!!蓮、ほっぺ捥げる~~~!!」

蓮のほっぺ捩じ上げ攻撃から解放された社は、ヒリヒリする頬をさすりながら抗議の声を上げるも、
やっぱりうれしそうな様子だった。

「で?最上さんじゃなければ誰が作った弁当なんですか?もしや社さん、彼女ができたとか?」


蓮にとっては何気ない軽口のつもりだった。
それなのに、社は急に真顔に戻り、じっと蓮を見据えた。


「急にどうしたんですか?」
「や、これキョーコちゃんお手製弁当だよ? ………蓮、ごめん…俺……いや、なんでもない!それより今日のスケジュールだけど……」

仕事モードにシフトチェンジした社を不審に思いながら、『これ以上は聞いてくれるな』という社の様子に、
それ以上の事を聞けないまま蓮は撮影現場へと車を進めた



***



「敦賀さぁーん、こちらの席あいてますぅー」
「ちょっと事務所に連絡を入れなくちゃいけなくて。すみませんが今日は楽屋で済ませます。」
「えーっ。敦賀さんがいなきゃつまんなーい。」

休憩になり、共演者からのあからさまに媚びを浮かべた[一緒にお弁当]攻撃をごめんね?と躱して蓮は社と共に楽屋に戻った。
普段は食に全く興味を示さないのに、キョーコの手作り弁当…恋のスパイスによって昼が待ち遠しくて仕方がなかった。


「ほれ、蓮」

「ありがとうござい・・・ます?」

キョーコお手製弁当の事をいそいそと受け取ろうとした蓮の目が社の弁当を凝視した。

「?どうした??」
「社さんの弁当箱、俺のより大きくないですか?…5倍くらい」

その差は『当社比1.5倍』なんてものではなく、普通サイズの弁当箱と、2段重。

「ほらっ、弁当箱が無くて、キョーコちゃんの下宿先のだるまやさんのものなんじゃない?」


少し焦った風の社だったが、普通サイズの弁当相手に四苦八苦する癖に、サイズで文句を言うなんて100年早いと至極もっともなことを言われ、
蓮はモヤモヤしつつも、手にあるキョーコの色とりどりのお手製弁当に至福を感じていた。

「…弁当相手に蕩ける笑顔を向けてないで早く、有難く頂きなさい。そしてその笑顔はキョーコちゃんに見せなさい」
「分かってます」
「おっ!認めたね?」


イラッ


「!~~~~~痛いっ!!!箸で鼻をつまむな!!行儀悪いぞ!」

本当は鼻の穴に箸を突っ込んでやりたかったけど、寸前で思いとどまってあげましたよ。
……あれ?社さんの弁当に、俺のにはないおかずが入ってる??


よく見ると、そこかしこに社の弁当にしかないおかずが所狭しと詰められていた。
社は気にも留めない様子で『んまいなー、おいひぃなー』と独り言を言いながらいそいそと弁当を口に運んでいた。

「…なんですかね、この気持ち」
「ん?どうした?蓮?」
「だって社さんの弁当の方が何気に豪華じゃないですか?勿論こっちのもすごくおいしいですよ?でもなんか…
なんか差をつけられてるような気がするんですけど」
「えぇぇっ?そそそっそうかな?」


明らかに目が泳いだぞ?
なんだ??
…最上さんの事を社さんも好きになったとか?

まさか最上さんも社さんの事を?

朝早く、社さんに弁当を渡したくて最上さんは事務所にいたんじゃないか?
…社さんに弁当を作りたくて、その弁当のついでに俺の分も作ってくれたとかそういうオチか?
確かに社さんは仕事のできる優秀な社会人だし優しいお兄ちゃん気質だ。そんな社さんにコロッといってもおかしくないぞ?

真っ青な顔で自分を凝視する蓮を見て、社はため息をついた。

「蓮、変な妄想してないでちゃんと弁当食べろよ。真心をきちんと受け止められない奴の恋路なら、俺は応援しないどころか全力で阻止するぞ?」

厳しい眼で見据えられ、蓮はそれ以上何も言えず、弁当をもそもそと食べた。
さっきまでの幸せだった気持ちに一気に冷水を浴びせられた気分だった。

…いつもなら、どんな料理よりも美味しいと感じるキョーコの料理が、今日に限っては何の味も感じなかった。



*



撮影を終えた後、事務所での雑誌取材を2本こなして今日の仕事が終わったのが21時だった。
休憩の後、社との会話はもっぱら事務的なもので、移動中の車内も私語厳禁状態の重苦しいものだった。
蓮は、子供じみた嫉妬心で、社に不快な思いをさせて悪かったなと反省していた。

「社さん、お疲れ様でした。今日はもう上がりですよね?送りますよ」

いつもなら、日中も運転している蓮を気遣ってタクシーで帰るという社も、しゅんと項垂れる蓮の謝罪を酌んで、『悪いな』と受け入れていた。
少しほっとして普段通りの軽口を叩き合いながら駐車場に向かう途中、廊下で俳優セクションの松島主任に声をかけられた。

「あっ蓮!ちょうどよかった。今度の映画の台本、今日届いたぞ。俺のデスクにあるからちょっと寄ってくれないか?」
「分かりました。・・・社さん、少し待っててもらえますか?」
「はいはい。じゃあ、ラブミー部の部室にいるよ。もしかしたらキョーコちゃんいるかもしれないしなっ」


スキップで消えていく社にほんの少し、


イラッ


とした。

台本を受け取りった後、松島に近況報告という雑談をしていたせいで、30分ほど経ってしまった。
自分が送るといったせいで社を待たせてしまい申し訳ないと思いながら…
部室にキョーコがいるかもしれないとはやる気持ちでラブミー部の部室のドアをノックしようとしたとき、中から人の声が聞こえてきた



「……んっ…社さんっ…こんなところで…ダメッ…ぁ」
「『社さん』じゃんくて、『倖一』だよ?」
「…ゆき…ひ……んっ」



何が起きているのか分かったが、頭が、心がそれを拒絶した。

最上さんと社さんが、そんな関係に??一体いつから???


イライライライライライラッ・・・・ブチッ


頭の中が真っ白になり、次に怒りのような気持ちに襲われて、ただ本能だけが動き出した


ソレハオレノモノダ
ダレニモフレサセナイ ダレニモワタサナイ



ドゴーーーン!!



「うわっ!」
「きゃっ」


ドアをぶち破り、部室に入った蓮は彼女を包み込んでいる男の襟首を掴んで引き剥がし、首を締め上げる。


「うげっっ・・・・蓮っ・・・・堕ちる堕ちるーーーーーーーーっギブギブ!!!!」
「ちょっ敦賀さん!やめてっ!!やめなさいよっ!!モーーーーーーーーーーーーーーッ」



あれ??最上さんの声じゃ…ない?


腕に縋りつく彼女を見ると、キョーコ…の親友の慌てた顔がそこにあった。


???????


社と奏江の顔を交互に見比べる。


?…
!!!


「どうでもいいから… そろそろ 離してくれ…   河岸でじいちゃんが 手を振って…る…」
「きゃーっ社さーーーん!!」




つづく。





小咄のはずが前後編になってしまいました。



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